国際高等教育院付属国際学術言語教育センターの課外教育部門では、皆さんの自発的な言語学習を応援しています。
課外教育の重点項目は、Speakingです。自分で話すという能動的な行為は、多くの日本人が苦手とするところです。しかし、外国では文法などよく知らなくてもペラペラ話している人をよく見かけます。なぜか？とかく正確な言語の使用にこだわるあまり、「相手に自分の気持ちや意見を伝える」という言語の本来の意義が忘れ去られているのが日本だからです。試験・成績・卒業のためだけの外国語教育になり下がっています。これでは、外国語を話せる日本人は永遠に増えません。国際化は夢のまた夢。
だからこそ、京大生には、成績も気にせずに、自分で選択して自由に学習できる課外教育で、外国語を対面で話せるようになっていただきたいのです。

言語は、まず聞き覚えで特定のシチュエーションへの定番リアクションを覚えることで、会話をスムーズに進められるようになります。そこから難解なテーマも話し合える社会的信頼感を築けるようになります。ところが、京大生の中には、挨拶も相打ちもうまくできないのに、受験英語で暗記した語彙、培った文法や作文力を駆使して、普通の会話では使わないような文語的で難解な表現を使い、一方的な話し方をする人がいます。しかも、発音も不正確なことが多く、結果、自分の言っていることが通じない！そこで全く自信を失うか、相手は自分の思考についていけない馬鹿な奴だと誤解するか、どちらかになってしまいます。こんな不幸な外国語の使い方から抜け出すには、書籍・文法重視の古典的言語学習から離れるしかありません。

日本の中等教育における外国語教育の一番の弱点は、正しい音声を一緒に教えないことであり、実際に話せるようになる教え方をしていないことだと考えます。課外教育で提供している外国語学習アプリでは、例文に必ず音声がついているので、自然に正しい発音を身に着けながら実生活での言葉の使い方や決まり文句のフレーズを、正しい発音や抑揚を、またBUSUUでは１４か国語の４技能を実践的に学習できます。２０２０年早春のパイロットプロジェクトを契機に２０２０年度から正式採用した外国語学習アプリは、AIを使ったものなので、いきなり対面で話すのが苦手な京大生にぴったりだと思いました。また、本業に忙しい京大生が、隙間時間で学べる機会を利用できます。
今では多くの京大生から高い評価を受け、検定のスコアアップなど実際にその成果も学生から報告されています。

その意味で、英語を話すことの敷居を低くするために、２０２２年度より日本製のSpeak Buddyをラインナップに加えました。相手の質問に１０秒以上かかって作文してから返事するのでは一向に会話は進みません。まずは会話パターンをマスターして、反射的に話すること自体を楽にするアプリです。また、学習したパターンを利用しての応用文を自分ですぐに作って話す練習もできます。旬の話題を英語で表現したコーナーでは、留学生との会話にネタとネイティブな表現方法を提供してくれます。
もちろん、提供したアプリは最初から満足のいくものではありませんでした。BUSSUも、初年度には「英語の文法レベルが低すぎる」「京大生には易しすぎる」一方、初修外国語は「いきなり音声や知らない表現が出て来て、難しすぎる」と非難轟々でした。皆さん、文法中心の教育を受けてきたのですから、無理もありません。しかし、いまさらアプリで英語文法を学ぼうと思っていること自体、的外れです。”普通の英会話ができること”を目標としているからです。初修外国語では、理屈抜きで取り合えず音から入るというアプローチを受け入れる心の準備が必要です。また、日本人利用者が少なかったせいか、当初日本語の誤記も多数見受けられました。そうした京大生のフィードバックを本社に丸ごと伝え、地道な交渉の末、英語ではC1レベルが加えられ、カリキュラムも多くの言語で刷新され、4技能を音声付きで学べる安定した学習コンテンツに進化しています。また、２０２２年度後期からネイティブの専任講師と少人数で授業を受けられるLive Group Lesson(長期休業中に別途無料履修者を募集)も提供しています。
ELSA は、もともと音声認識AIを開発するLAのベンチャー企業でしたが、わずか数年の間に米国諸大学やIELTS実施機関などと提携契約を積極的に行い、全体が見渡しきれないほど豊かなコンテンツを擁する英語発音矯正アプリの第一人者となりました。米国大学のキャリアコースやEILTSのSpeaking対策用講座もあり、発音だけでなく、文全体の抑揚や強勢なども改善できます。また、ポスターセッションや学会発表の準備には、自由に話した文章を多面的に分析・評価してくれるELSA Analyzerというオプション(長期休業中に別途無料履修者を募集)もあります。 どのアプリも１週間の無料お試しコースがありますので、実際にやってみて気に入ったものを利用するとよいでしょう。

なお、１週間の無料お試しコースは、アプリ会社と個人の契約となりますので、期間内に必ず解約するなどして、料金の引き落としにご注意ください。

コロナも日常化し、２０２３年度後期には留学生140名＋各研究科留学生と数多くの留学生が滞在しますので、アプリで臆することなく話せるようになったら、実践のはなし相手にも事欠きません。お昼休みに開催されるInternational Networking Meetingも積極的にご活用ください。