英語学習のコツ

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英語リスニング力を向上させるために(約15,500語)



英語リスニング力を向上させるために

目次


1 はじめに:なぜ4技能の中でリスニング力向上を最優先させるべきなのか

・リスニングがスピーキング、リーディング、ライティングの力の土台
・リスニングを向上させないと、これまで身につけたリーディングが最大限に活かされなくなってしまう。


2 リスニング力分析:リスニング力とはトップダウン処理とボトムアップ処理の統合

・「全体から部分へ」の聞き方と、「部分から全体へ」の聞き方の両方をマスターしよう。


3 方法1:自分の興味関心に直結した英語を自分のペースで聞く習慣をつける

・自分の興味関心にしたがって、「字幕・文字起こし付き動画」、「字幕・文字起こしなし動画に字幕をつけたもの」、「ポッドキャスト」、「本の朗読(オーディオ・ブック)」、「活字読み上げ」の5つの方法でトップダウン処理能力を向上させよう。


4 方法2:英語の音声的特徴を意識的・分析的に身につける

・発音を学ぶ過程の中で、自然に英語を聞き分ける力が身につく
・発音の技能は、リスニング・スピーキングだけでなく、リーディング・ライティングにも好影響を及ぼす。


5 終わりに

・その他の有用なサイトへのリンク

この記事の英語版をAI (Amazon Polly) が読み上げた音声を聞く(ChromeやEdgeではスピード調節もできます)



1 はじめに:なぜ4技能の中でリスニング力向上を最優先させるべきなのか




要約

・リスニングがスピーキング、リーディング、ライティングの力の土台
・リスニングを向上させないと、これまで身につけたリーディングが最大限に活かされなくなってしまう。



この記事にたどり着いた皆さんは、英語リスニングに苦手意識をもっていたり、リスニング力を向上させたいと強く願ったりしているのではないでしょうか。動機は何であれ、この記事を参考に、ぜひあなたの英語リスニング力を向上させてください。なぜなら、日本の大学生の多くにとって、リスニングこそは「読み書き聞き話す」4技能の中で、最優先で向上させるべき技能だからです。このセクションでは、「リスニングこそは英語力の基礎」と「リスニング力を充実させないとこれまでの受験英語で培ったリーディング力が最大限に活かされなくなってしまう」という2つの観点から、リスニング力向上の必要性を説明します。

ただ最初に、この記事の限界を認めなければなりません。聴覚障害をおもちの方は、英語に限らず聞き取ることについて非常な困難を経験しているでしょう。この記事の著者は障害についての専門的知識をもっているわけではありませんし、障害の状況は個別的なものかと思います。ですから、まことに残念ですがここで聴覚障害をおもちの方に英語リスニング力向上のための格別の助言を差し上げることができません。非力をお詫び申し上げます。


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1.1 リスニングがスピーキング、リーディング、ライティングの力の土台



「英語リスニングができなくとも、アプリで英語音声を文字起こしすれば問題解決するのではないか」とお思いの人もいるかもしれません。しかし、その考えは皆さんの大きな可能性を否定してしまうものです。リスニング力をつけて、英語の音声的特徴を身につけることは、スピーキング、リーディング、ライティングの力の土台となるからです。

スピーキングは、自分が言いたいことを、勝手なやり方で口にすることではなく、相手が聞いて理解しやすいやり方で音声化することです。スピーキングにおける音声化は、相手が聞き取りやすいように、ある程度は英語の音声的特徴(発音、イントネーション、リズムなど)を踏まえた上で行うべきです。 発音についてはもちろん、英語が母語でない人が、英語母語話者のように発音ができないのは当たり前のことで、恥じることではありません。しかし、あまりに強い日本語訛り(あるいは個人的な癖)で発音すると、世界の多くの人にわかってもらえず、結局苦渋を味わうのは話している本人となります。イントネーションも、発音は正しいが音の抑揚がない「棒読み」を聞くと意味があまり伝わらないことからもわかるように、自分が意図する意味に応じて音の高低が自然に変化するように話すことが大切です。リズムも、自分が強調したい意味が効果的に伝わるように、音の強弱をうまくコントロールするべきです。こういった英語の音声的特徴がある程度身についた上で英語を話せば、聞く方は自然と話の内容に集中します

このようにスピーキングにおいては、話者が英語の音声的特徴をある程度身につけておくことが非常に重要です。この体得の基盤は、もちろん、自然な英語(=話の内容と音声的特徴が連動している英語)をたくさん聞くことにあります。音楽をマスターする時でも、人はまず身につけたい音楽を数多く聞きます。運動技能を身につける時でも、人はまず上手な人の手本をよく観察します。リスニングを行うことは、実は、スピーキング力構築の準備(「見学」)をしていることなのです。

似たことはリーディングについても言えます。リーディングとは、読み手が心の中で、目の前にある活字を表情豊かな人の声に変換することから始まります。リーディングとはいわば「目で行うリスニング」なのです。少なくとも、このような音声化が楽にできなければ、つまりは活字から人の声が聞こえてこなければ、そのリーディングは実社会での実用レベルには達しないでしょう。

この活字の音声化は、音楽家が楽譜を音にすることよりも困難です。楽譜には、音の高低・長さ・調性・表情などを指定する各種の記号が備えられています。しかし、英語の文章にはアルファベットが並べられているだけで、楽譜のように音変換を助けてくれる便利な記号はありません。だからこそ、リスニングを豊富に経験して、英語の音声的特徴を身につけておく必要があるのです。

単に単語の発音が自動的に想起されるといったレベルではなく、意味の変化とともにイントネーションやリズムがどのように変わるかを十分にマスターしているレベルまで、英語の音声的特徴を身につけてください。いってみるなら「英語という音楽」をリスニングで実感しておくことが、リーディングを「音楽を聞くように快適に」行うために必要です。

ライティングの基礎もリスニングにあります。ライティングの基本は、読み手が心地よく読める文章、すなわち、読み手が心地よく音声化できる文章を書くことです。言い換えるなら、ライティングとは、読み手に快適にリーディング(=目でリスニング)してもらうように文章を書くことです。

まとめるなら、リスニングの経験が豊かになり英語の音声的特徴が身につくにつれ、スピーキングもリーディングもライティングも上達します。皆さんが今目指すべきは、リスニングテストで高得点を取ることではなく、英語力を総合的に向上させ、英語を楽しんで使えるようになることです。

しかし、リスニングは、相手(話し手)のペースで行わねばなりません。スピーキング・リーディング・ライティングは、自分が心地よい速度で行うことができます。しかし、リスニングでは、相手の音声のスピードをコントロールすることが、多くの場合においてできません。この理由で、リスニングに苦手意識をもつようになる人もいますが、ぜひこの記事の後半で紹介する方法で、リスニング力を向上させ、皆さんのもつ潜在的な英語力を一気に開花させてください。

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1.2 リスニングを向上させないと、これまで身につけたリーディングが最大限に活かされなくなってしまう。

皆さんの多くは、大学入試のために多大な労力を費やしてきたでしょう。その努力が皆さんの高い英語リーディング力となっています。皆さんは、文章に書かれた英語なら、かなりの精度とそれなりのスピードで英語の意味を理解することができます。  

しかし多くの人にとって、そのリーディング力がそのままリスニング力になっていません。「リスニングはそれほど入試での比重が高くないから」といった理由で、リスニング向上を軽視し、リーディング向上に努力を注いだ人もいるかもしれません。その結果、大学には合格したが、鍛え抜いたリーディング力に匹敵するリスニング力が伴っていないので、文字化されていたら簡単にわかる英語音声も理解できず、会話場面でうろたえてしまいます。加えてリスニング力はスピーキング力(特に意図する英語を他人にわかるように音声化する力)に直結していますから、リスニングの経験不足は、スピーキング力の不足に直結します。  

そのような学習者にとって悔しいのは、その学習者のリーディング力の高さを知らない英語使用者からすれば、その学習者は「こんなに簡単な英語さえわからない、ほとんど英語ができない人」に見えるということです。学習者が話をしてみても、英語の音声的特徴を身につけていませんから、少々文法が間違っていても流れる音楽のように英語を連続的に発話することができません(よく「海外の英語学習者は、文法は少々デタラメでも自分が言いたいことをどんどん伝えようとする」と言われますが、日本人の多くはそのような話し方を苦手としています)。その学習者が口ごもるばかりでしたら、多くの英語使用者は「この人は英語を知らないのだ」と思いこむかもしれません。そのような学習者の努力を察しない人でしたら、言語の表面的な特徴だけで人の知性一般に対してまで否定的な判断をしてしまいます。  

リーディング力にふさわしいリスニング力が伴っていないというのは、このように非常にもったいなく、悔しいことです。リスニング力を少しでもリーディング力に近づければ、これまでの受験勉強の苦労も報われますし、不当な評価を未然に防ぐこともできます。よく「受験英語は実用的でない」と言われたりしますが、リスニング力が受験英語のリーディング理解力に近づけば、その人の英語力は非常に実用的な英語力になります。リーディングで理解している英語の活字に対する適切な音声表現を(再)学習することは、音声表現に慣れてそれを身につけるだけのことです。大学にいるうちに、ぜひリスニング力を向上させて、あなたにふさわしい英語力を獲得してください。 以上、このセクションでは、4技能の中でもリスニングがもっとも根幹的なものであることを説明しました。次は、そもそもリスニング力とはどのような構造をもっているかを簡単に分析します。その後で、その分析に基づいたリスニング力の向上法を提示します。



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2 リスニング力分析:リスニング力とはトップダウン処理とボトムアップ処理の統合


要約

・「全体から部分へ」の聞き方と、「部分から全体へ」の聞き方の両方をマスターしよう。




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リスニング力は、トップダウン処理とボトムアップ処理の統合だと分析することができます。トップダウン処理とは、文章の全体的な意味の理解といった抽象的で高次の認知処理を手がかりにして、それよりも具体的で低次の認知処理(たとえば、聞こえてくる語句の特定)を促進することです。ボトムアップ処理とは、その逆で、語句の特定などの具体的で低次の認知処理を手がかりにして、文章全体の意味の理解といった抽象的で高次の認知処理を促進することです。リスニングとは、トップダウン処理で細部の把握を手助けしながら、ボトムアップ処理で全体の理解を推進するというように、両者が相互補完的に働く過程です。

やや哲学的ですが、このトップダウン処理とボトムアップ処理の相互補完は、「全体と部分の解釈学的循環」と呼ばれるパラドックスにつながります。このパラドックスは、「部分が把握できないと全体は理解ができないが、部分を把握するためには全体を理解しておく必要がある」ことを意味します。 リスニングについては、「単語や文を聞き取ることは、文章全体の意味をある程度理解していないとしばしばかなり困難である。とはいえ、文章全体の意味を理解するためにはその部分を構成している単語や文を十分に聞き取っていなくてはならない」となるでしょう。言い換えるなら、「文章全体の意味を考えずにひたすら細部だけを聞き取ろうとすること」も「細部の把握を怠って文章全体の意味だけを理解しようとすること」も困難だ、ということです。リスニングでは、全体の理解と部分の把握の両方を同時に大切にすることが重要です。

トップダウン処理とは、たとえば「この文章はどのようなトピックについて語っているのか」、「この文章は、このトピックについてどのような立論をしようとしているのか」、「今聞いているこの文は、文章全体の中でどのような機能を果たしているのか」、「文章全体の構成から考えると、この次の文はどのような機能を果たす文となるだろうか」、といった問いを次々に自分で立てて、それらの予測に基づきながら、細かい部分を聞き取ろうとすることです。 ボトムアップ処理とは、それとは逆に「この語句が述べられたということは、次にどういった語句が来るだろうか」、「この文の意味からすれば、文章全体としてはいったいどのようなことを言いたいのだろうか」、といった観点で、部分の把握から全体の理解を目指すことです。 もちろん、上のような問いのほとんどすべては、言語化や意識化されないレベルで、脳が無意識のうちに立て、検討しています。これらの問いを頭の中で言語化・音声化してしまえば、外から聞こえてくる英語音声を聞き取ることが困難になってしまいます。脳が行っている認知処理の大半は無意識レベルで行われています。

このようにリスニング力を、トップダウン処理とボトムアップ処理の統合、あるいは全体理解と部分把握の相互補完と考えますと、リスニング力向上は「全体的意味の理解を重視しながら、細部の把握力を向上させる方法」と「細部把握の力を向上させることにより、全体的意味の理解を目指す方法」の2種類の方法で行った方がよいと考えられます。「上から攻めるか、下から攻めるか」とも言えるでしょう。

以下、トップダウン処理とボトムアップ処理に具体的に取り組むための2つの方法を説明します。もちろん学習法には個人による好みもあるでしょう。下の方法の中から自分にあったやり方を適宜取捨選択するか、それらを参考にして新しいやり方を見つけてください。



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3 方法1:自分の興味関心に直結した英語を自分のペースで聞く習慣をつける



要約



・自分の興味関心にしたがって、「字幕・文字起こし付き動画」、「字幕・文字起こしなし動画に字幕をつけたもの」、「ポッドキャスト」、「本の朗読(オーディオ・ブック)」、「活字読み上げ」の5つの方法でトップダウン処理能力を向上させよう。





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かつて孔子は『論語』でこう述べました。「これを学ぶ者、これを好む者に如かず。これを好む者、これを楽しむ者に如かず」。現代語に翻訳するなら、「あることを、ただただ勉強する人よりも、そのことを好きになる人の方が物事は上達する。それよりもさらに上達するのは物事を行うことを楽しんでいる人である」とでもなりましょうか。リスニングについて拡大解釈するなら、「砂を噛むような思いをして無理やり勉強するよりも、そもそも自分が好きな内容についてリスニングする方が効果的である。さらには、好きな内容についてリスニングすること自体が楽しみとなり、リスニングが毎日の習慣となる方が、はるかにリスニングが上達する」と言えるでしょう。

この点でお勧めなのは、「自分の興味関心に直結した英語を、自分のペースで聞き、その楽しさを感じて英語リスニングを自分の毎日の習慣の中に取り込む」という方法です。この方法は、文章全体の意味を重視するトップダウン処理重視の方法ですし、技能訓練よりも自分の気持ち(動機・興味・関心・意欲)を優先させる方法です。この方法の教材としては、「字幕・文字起こし付き動画」、「字幕・文字起こしなし動画に字幕をつけたもの」、「ポッドキャスト」、「本の朗読(オーディオ・ブック)」、「活字読み上げ」の5つが考えられます。以下、順次説明していきます。




3.1 字幕や文字起こし付き動画



英語の字幕 (subtitles) や英語の文字起こし (transcript)を参照しながら英語を聞くことは、細部まで把握するための英語リスニング力はまだ十分ではないが、英語動画の内容に興味をもっている学習者にとっては、格好の英語学習教材となります。字幕や文字起こしの英語を目で追いながら英語を聞くことは、学習者のリーディング力に対して適切な音声表現を与え、リスニング力(ひいてはスピーキング力)を向上させることにつながります。 また、さらなるリーディング力の向上にとっても、英語音声のスピードに合わせて字幕や文字起こしの英語を追うことは、リーディング力のスピードの向上にもつながることでしょう。もちろん最終的に目指すのは、字幕や文字起こしを見なくても、直に音声を理解することです。しかし、ここではトップダウン処理、優先の方法ということで、英語動画全体の意味理解を優先します。この方法は、学習者の気持ち(動機・興味・関心・意欲)を大切にすることでもあります。

字幕や文字起こしが提供されている英語動画の中でも、英語学習に最適なのは、TEDやKhan Academyといった啓蒙的な無料動画ですTEDは先進的なアイデアなどで世界的に注目を浴びている人を招いて、その人に20分以内でプレゼンテーションしてもらう試みです。ほとんどの動画には字幕も文字起こしもついています。(関連サイトとして、一般視聴者ではなく英語を母語とする学習者のために作成されているTED Edもあります。ここでもたいていの動画には英語字幕がついています)。

Khan Academyは小学校低学年から高校レベル程度の教育内容を短い動画(および練習問題)で解説しており、英語字幕も付いています(登録なしでも動画などを閲覧することができます)。このKhan Academyなどの啓蒙的な英語動画で、皆さんが高校までで学んだことを、英語を通じて再学習すると、これまで学んだ内容を別の視点から学び直せるので、結構知的好奇心を喚起されます(受験から離れて、純粋に学ぶことは楽しいものです)。また、皆さんは歴史や地理や数学や自然科学科目についても結構な知識をもっているはずですが、それを英語でどう言うかを知らないことがほとんどです。ですから、英語でそのような話題になった時にも、参加したいのに参加できずに悔しい思いをすることになります。しかし、これらの啓蒙的な動画で英語表現を効率的に学べば、皆さんは自分の知的好奇心に見合った英語力を獲得することができるかもしれません

以上、英語の字幕や文字起こしを見ながら、動画の英語音声を聞いて、英語動画自体を楽しむ方法を述べましたが、ひょっとしたら皆さんの中には、英語音声のスピードが早すぎて英語字幕・文字起こしを十分に追うことができない人もいるかもしれません。その場合は、たいていのサイトに付いているスピード調整機能を使って、1倍以下のゆっくりしたスピードで聞くことで対応できます。

またもし自分が興味をもっている分野の専門語彙をあまり知らない場合は、まず日本語での字幕や文字起こしを読むことも考えられます。この場合、英語動画を、「日本語翻訳と再生動画が付いた英語教材」と考えて活用してください。自分が本当に好きな話題でしたら、そういった教材を使っての学びも楽しめるはずです。ただし日本語字幕を見ながら英語を聞くと、どうしても学習者は脳内で日本語字幕を音声化してしまいますから、その分、英語音声への注意が減ってしまいます。日本語字幕を使うのは、あくまでも次善の策として考えてください。



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3.2 字幕なし動画に字幕をつける



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以上、予め英語の字幕や文字起こしが設置されている動画の使い方の説明をしましたが、多くの動画サイトは字幕や文字起こしを備え付けていません。これまではそういった動画については、「興味津々だけれど、自分のリスニング力では難しすぎる」と諦めがちでした。しかし2021年春に、GoogleがChromeブラウザーに画期的な機能を無料で追加しました。Chromeブラウザーで流れてくる英語音声を、AIが自動認識してそれを直ちに文字起こししてくれる機能です。これによって、ユーザーは、音声が文字化された英語字幕を、英語音声より一瞬遅れて読むことができるようになりました(設定は、Chrome画面の右上から「設定>詳細設定」を選べば簡単にできます)。

このChrome字幕は、英語音声に先立って提示されず、一瞬遅れてから現れます。実はこの特徴が、リスニング力向上に意外に役立ちます。英語音声より先に字幕を読んでしまうと、どうしても文字による先入知識が優勢になり、音声の聞き分けの集中度が下がります。ですが、音声を聞いている瞬間には字幕がなく、その一瞬後に音声の文字化が現れると、リスニングの集中度があがります。また、自分が聞いたと思った英語は、その直後に字幕で示される英語によってその正否が示されるわけですから、学習者は、いわば手を動かさずにディクテーション(=英語音声聞き取って、それを自ら文字に起こす訓練)に近しいことをし続けているような状態になります。この「聞く-読む-確認」の繰り返しは、確実に細部のリスニング力を向上させます。

またもちろんのこと、この字幕機能は消すこともできますから、字幕をなくして、自分のリスニング力がどのくらいついたかを確かめることもできます。ICTとAIのおかげで、従来では考えられないほどに、英語リスニング向上法のオプションが無料で与えられたと考えてください。

このChromeの自動英語字幕機能により、活用できるサイトには、ニュースサイト、かなり凝った趣味のサイト、NHK語学番組サイトなどが考えられます。 ニュース動画は、英語の放送局がたくさん提供しています。そのニュース動画をパソコン上のChromeブラウザーを通じて見ることにより、ユーザーは英語字幕でもニュースの英語音声を確認することができます。ニュースのアナウンサーは、発声において職業的な訓練を受けた人たちですから、Chromeの音声認識と文字起こしもほぼ100%正確です。また、英語でもニュースを視聴するようにすると、英語話者と会話をする時の話題作りに便利です。ニュースを日本語だけで見ていたら、地名や人名の英語発音を学べません。ですから、たとえそのニュースについて自分なりの考えがあったとしても、その話題についてうまく英語で意思疎通ができません。ニュースは英語でも視聴する習慣をつけておくと、会話の話題の幅が一気に広がります。

かなり凝った趣味の動画は、英語では少なからず公開されています。たいていの趣味の領域において、英語動画の数は日本語動画の数より多いはずです。YouTubeの検索窓に英語のキーワードを入れて、自分の趣味について語っている英語動画を探してください。また、もし皆さんの中で、気になる研究者や著者がいたら、その人たちもYouTubeで検索してください。多くの場合において、講演などが公開されています。論文や本の活字を通じてしか知ることができなかった研究者や著者の肉声と表情を知ることができるのは嬉しいものです。

なお、こういった個人作成の動画の場合、話者は発声訓練を受けていない人が多いので、Chromeの音声認識精度はやや低下します。しかし面白いもので、専門知識(およびぜひ理解したいという意欲)があれば、Chromeが認識しそこなった英語も結構わかるものです。「たしかにこの英語はChromeが認識したようにも聞こえるが、文脈からすれば○○であるに違いない」といったように、Chromeのリスニング力の限界を指摘できるようになります。ぜひ自身の個人的関心事から、英語動画を探し、それに字幕を付けて英語動画を視聴することを生活の中の楽しみにしてください

自動字幕生成機能を活用するのに適している他のサイトに、NHKの語学番組(英語系)があります。NHKの語学番組は、日本人学習者のニーズに基づいて作られているので、特に英語が不得意な人には貴重な教材となっています。そんなNHK語学番組は、NHKのウェブサイトで1週間分程度まとめて聞くこともできますから、学習者は決められた日時にラジオの前に座る必要はありません。

しかし、NHK語学番組は、テキストを購入してはじめて十分な学習ができるように設計されていることがほとんどです。テキストは電子書籍版も含めて良心的な価格で販売されていますが、テキスト購入が壁となって、NHK語学番組視聴が継続しない学習者もこれまでいました。ですが、Chromeの無料の自動字幕機能により、英語音声が十分に聞き取れない学習者がテキストを見なくても、英語音声をチェックすることが可能になりました。これで、NHK語学番組を利用して学習することも容易になりました。もちろん、字幕だけではテキストの豊富な内容を十分に伝えることはできません。番組が気に入れば、テキストも購入することをぜひお勧めします。

以上、ニュースサイト、かなり凝った趣味のサイト、NHK語学番組サイトを例にとってChrome自動字幕生成機能を使った英語動画の楽しみ方を解説しました。この他にも活用法はいろいろあるはずです。ぜひChromeのこの機能を自律的に使いこなしてください。



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3.3 ポッドキャスト



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ポッドキャストは、一般のウェブ空間ではなく、スマホ・タブレット・パソコン上の一定のアプリを通じて視聴することができる番組です。音楽ストリーミング配信アプリを購読している人は、そのアプリの中でもかなりの音声ポッドキャスト番組が提供されていますから、ぜひ活用してください。ここでは音声だけを配信するポッドキャスト番組の使い方について解説します。

著名なポッドキャスト番組は、プロのチームが作成していることがほとんどですので、内容の正確性や登場者の発声などの質が高いことが多いです。ですから、リスニング学習の点ではお勧めとなります。そのような代表例として、The New York Timesが提供している複数のポッドキャスト番組があります。これらは新聞記事紙面と連動していますから、視聴者は報道されている内容を多面的に検討することができます。対話番組の書き起こしは、しばしばThe New York TimesのWeb版にも掲載されています(ちなみにThe New York Timesなどの新聞のWeb版は、月一定回数以上閲覧しようとすると有料購読登録が必要になります)。 また、自然科学の有名な学術誌であるScienceNatureもポッドキャスト番組をもっており、自然科学の発見の知見をダイジェストにして報告しています。こちらも、それらの学術誌のウェブサイトと連携しています。

ポッドキャスト番組の中には、もう少し気楽に作られた番組もあります。その中には、気軽な英語学習系の番組もありますので、自分に最適な番組を皆さんもどうぞ見つけてください。



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3.4 本の朗読(オーディオ・ブック)



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一般に市販されている本をプロが朗読したオーディオ・ブックも現在は容易に購入することができます。もし好きな英語の本があって、そのことばを自分の糧としたいと思うことがあれば、その本のオーディオ・ブック版を購入し、細切れの時間や就寝前の時間などを使って、それを聞き続けてください。こういった繰り返しのリスニングは、自分の人生にとって意味深い英語表現を身につけるためのいい方法になります。

また、英語以外の授業で使われた翻訳書が気になったらそれを熟読した後、その原著の英語書籍とオーディオブック(英語朗読)を買ってみてください。そして、オーディオ・ブックだけを何度も聞く、あるいは目で英語書籍の英文を追いながらオーディオ・ブックを聞くことなどを試してみてください。この場合は、本の内容と英語を統合的に自分の知識とすることができます。オーディオ・ブックをうまく活用して、専門書の内容をオリジナル表現と同時に習得してください。

あるいはそれほど真剣にならずとも、昔、日本語翻訳で読んだ児童文学の名作をオーディオ・ブックの英語で聞き直すことも楽しいものです。学習者は、あらすじを知っていますから、聞き続けることも容易です。有名なセリフを覚えていることも多いでしょうから、「英語(原語)ではこう言うんだ!」といった発見も楽しめるでしょう。

たいていのオーディオ・ブックアプリには速度調整機能が付いていますから、標準速度より遅くしたり早くしたりして、自分にとってもっとも心地よく聞ける設定をすることができます。また、多くのオーディオ・ブックアプリは、Chromeブラウザーで使用することもでき、自動字幕をつけることもできます。



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3.5 活字読み上げ



現在、英語の文章を入力したら、その文章をAIが英語の音声にしてくれるサービスが、ウェブ上で提供されています。英語力に自信がない人が、英語で研究発表を行わなければならない時など、準備した英語原稿を、これらの読み上げサイトで英語音声化しておき、それを何度も聞いて、自分でも流暢に音声化できるようにしておくと、少しは安心できます。もちろん発表は、原稿を読み上げるだけでは不十分で、質疑応答が大切ですが、それでも発表原稿の音声に慣れておくと、質疑応答の際のリスニングにも少しは役立つでしょう。ICTやAIが提供する可能性を使いこなして、自分なりの英語力発展を図ってください。[この記事の英語翻訳をAIが読み上げた音声を聞くにはここをクリック

以上、自分の興味関心と全体的な意味理解を優先させた、トップダウン処理的なリスニングの学び方(あるいは楽しみ方)を紹介してきました。「好きこそ物の上手なれ」あるいは「習うよりも慣れろ」とも言います。ぜひ自分にとって最適な教材を見つけて、それを視聴することを楽しんでください。 次は、ボトムアップ処理的に、英語音声細部の特徴を学ぶことを重視した取り組み方を短く紹介します。



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4 方法2:英語の音声的特徴を意識的・分析的に身につける



要約



・発音を学ぶ過程の中で、自然に英語を聞き分ける力が身につく
・発音の技能は、リスニング・スピーキングだけでなく、リーディング・ライティングにも好影響を及ぼす。



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このセクションでは語句や文といった細かい単位を正確に聞き取る技術を身につける「下から上を目指す」方法(ボトムアップ処理優先の訓練法)を簡単に紹介します。

英語の細かな部分の聞き取りができない大きな原因は、日本語とは異なる英語の音声的特徴を十分に把握していないことです。これを克服するためには、実は英語の発音教本を読んで、その解説(および付属音声)にしたがって発音の練習をすることが有効です。発音ができるように自己訓練すれば、その過程の中で自然に英語を聞き分ける力が身につくようになるからです。

発音も舌と口で行う運動技能なのですから、スポーツ競技の技を例にして考えてみましょう。世の中には才能豊かな人がいるもので、その人たちは誰からも教えられることなく、あるスポーツ競技を見ているだけで、自然とそのスポーツの技を習得してしまいます。ですが、多くの人は見ているだけでは、技をうまく実行することはできません。そこでコーチが、技のポイント(構造や過程)を説明します。そうすると、入門者もその形から少しずつ技を習得し始めます。最初こそ「まずこうして、次にこうして・・・」といったぎこちない動きかもしませんが、やがてはそのように意識的・分析的な実行が、これまで見続けていた上手な選手の技の様子のイメージと融合し、自分でも苦もなく技を実現することができるようになります。これと同じことを、リスニングでも行おうというのが、ここでの提案です。

英語の発音教本を読みますと、音素(=音の最小単位)・単語・句・文といった様々のレベルの英語が、日本人にとって発音が困難な表現や英語で頻出する表現などの観点から体系的に解説されています。英語音声も付属CDやダウンロード音声といった形でほぼすべての教本が提供しています。 これらの英語表現を、教本とモデル音声に忠実に真似しながら発音してみてください。始めは思うように舌や口が動かず、もどかしい思いをするでしょうが、それでも、発音のやり方(フォーム)に忠実に音声化を試みてゆくと、やがて身体の方が(これまで脳内に蓄積された音の記憶にも助けられながら)、その発音の仕方を習得します。

ある程度発音できるようになると、その発音を聞き分ける力が確実に向上します。人間は自ら実行できる運動技能は、実行できない運動技能よりも、より正確に認識できます。スポーツの例を出しますと、たとえば多くの人にとって国体での剣道の試合は、何がどうなっているのかわからないぐらい速い動きの連続のはずです。しかし、そのような人も、自分が剣道を練習するようになると、それまで見えなかった動きが見えてくるようになります。

英語でも、自分では最初、十分に聞き取れなかった英文があるとします。ですが、その英文を、最初はゆっくりでいいですから繰り返し音読してください。次に、音読のスピードを少しずつ上げてみてください。そうやってその英文を音声化する身体運動を何度も繰り返した後に、最初の英文をもう一度聞いてみてください。こんどは信じられないぐらいにその英文がゆっくり聞こえてくるはずです。この一般的な経験則を使って、英語のリスニング力をつけるために、まずは英語を正しく発音することを学ぼうというのがここでの提案です。


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もちろん、学んだ発音の技術は、リスニングだけでなくその後のスピーキングに役立つことは言うまでもありません。また前に述べた「リーディングとは目で行うリスニング」を拡張的に説明するなら、「リーディングとは、活字を自らの脳内で音声化して、その音声を心の中でリスニングすること」となります。ライティングも同様に、「ライティングでは、読者が心地よく音声化できるように、書き手が、自分が書いた英文を自分でも音声化しその音声の心地よさをチェックして、自分の英文を書き直すことが重要」となります(文章の達人が書いた文章を音読することを勧めるのは、この理由からです)。 そうなりますと、発音の技能向上は、リーディングとライティングの技能向上にもつながります。この記事の冒頭では、「リスニング技能向上こそが4技能の中での最優先課題」と述べましたが、リスニング力向上の1つの方法は、少し寄り道して、スピーキングの中の音声化技術(構音技能)だけを集中的に訓練することです。発音教本とモデル音声に忠実にしたがって構音の技術を学ぶことは、リスニング・スピーキング・リーディング・ライティングのすべての領域に望ましい効果を生み出します。

英語発音の入門書は、数多く市販されています。レビューなどから内容を推察し、自分にとってのよい本を選んでください。また、英語学習は、世界的に行われていますから、スマホなどのアプリでも、さまざまなアプリが販売されています。中には世界的なベストセラーもあり、それらの多くはAIを使って、利用者の発音を評価してくれるものもあります。アプリについても、レビューなどから自分にとって最適のものを見つけてください。ただし、発音判定機能のついたアプリの中には、アメリカ英語だけを基準として判定するものなどがあります。それらを使えば、たとえばイギリス英語風の発音をすると、それは世界的に十分に通じる発音であるにもかかわらず、低い評価しかこなかったりしますので注意してください。

総じて、英語発音の訓練は、「完璧にアメリカ人(あるいは他の種類の英語のネイティブスピーカー)のように聞こえるように発音する」といった目標設定をすると、いたずらに時間と労力がかかります。多くの英語使用者(=ここでは英語学習を自己目的化せずに、自分の人生の中で英語を使って何か意味深いことを達成しようとしている人を指す)は、「英語の発音は他人に無理なく聞き取ってもらえる (comfortably intelligible) 程度でよい。それ以上のレベルの発音を求めて訓練する時間があったら、自分の専門の勉強や趣味に時間を使った方がいい」と述べています。皆さんも、自分の学習目標を自ら定めてください。 以上、英語発音の入門書やアプリを探してそれを使いこなすことをお勧めしてきました。この英語教育部門のウェブサイトでは、英語の音声的特徴の中でも顕著なものの1つである、語と語がつながることによる音の変化を簡単に提示しています。ここをクリック [しばらくお待ちください] して、どうぞご活用ください。 また、ウェブ上で無料公開されているサイトの中でも非常に有益なものもあります。特に、伊庭緑先生(甲南大学)が監修・作成された以下のサイトは丁寧に作られていますから、ぜひ一度使ってみてください。



英語発音入門
- English Pronunciation Practice for Japanese Learners -
http://kccn.konan-u.ac.jp/ilc/english/



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5 終わりに



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以上、この記事では、なぜリスニング力向上が重要なのかを解説した上で、リスニング力をトップダウン処理とボトムアップ処理の統合という観点で説明しました。続いて、トップダウン処理優先のリスニング力向上法とボトムアップ処理優先のリスニング力向上法を紹介しました。  

皆さんの中で、自動車免許を獲得した人の中には、「自動車に乗り始めると自分の世界が変わった」と思った人もいるでしょう。英語もそうです。英語を、教室の中で勉強するのではなく、教室の外で使い始めると、一気に世界が広がります。その楽しさは、一度覚えたら忘れがたく、多くの英語使用者はますます英語を使うようになります。そして英語を使いながら、さらに英語を学んでいきます。学んだ英語は、その英語使用者の世界をさらに広げ深めます。どうぞ皆さんも、大学時代のリスニング能力開発をきっかけにして、英語を使う習慣を人生の中に取り入れ、皆さんの人生を充実させてください。 なお、これまでに紹介したサイトやアプリ以外にも有用なものはたくさんあります。

この英語教育部門ウェブサイトには、英語を自律的に学ぶために有用なサイトやアプリのデータベースもありますので、ここをクリックして、ぜひ活用してください。

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