英語学習相談:よくある質問

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このページでは、学生の皆さんの自律的な英語学習を支援する情報を提供します。
    内容の多くは学生さんとの対話内容を匿名化・一般化したものです。回答者は、特記されていない限り、英語教育部門長の柳瀬です。皆さんは英語の文法と語彙の基本を既に修得しているわけですから、後は「習うより慣れろ」です。どうぞ皆さんにとっての英語を、「勉強の対象」から「使いこなす道具」に変えて、人生を充実させてください。なお「自律的学習に有益なウェブサイトやアプリを探すためのデータベース」もぜひご活用ください。

1. 英語を話す機会を見つける。


S-Q1
: スピーキング力を上げようと思っているのですが、周りに英語話者がいなくて英語を話す機会がありません。クラスメートに「一緒に英語で話そう」と提案するのも少し気恥ずかしいです。どうすればいいでしょうか。

S-A1 : 同じi-ARRC(国際高等教育院・附属国際学術言語教育センター)の課外教育部門のウェブサイトをごらんください。キャンパス内にお昼休みで実施されている外国語会話クラブを紹介する「CLUBS」、言語能力の基盤である「文法・弁証法・修辞学」に関するセミナーを受け付ける「TRIVIA」、京大生が利用可能なアプリを示す「APPS」や、学生の国際交流を推進する「OWL」、あるいは資格試験についての「TOEFL/IELTS」などのページがあります。まずはどれかに参加し、そこでいろいろな機会を見つけてください。

追記
国際高等教育院では2022年度より国際教育プログラムを開催します。これは学部生30名を選抜し、その学生さんに、(1)通常より少し多い英語による全学共通科目を取ってもらい、(2) Kyoto iUPの留学生と共に科目履修をしてもらい、(3) 3ヶ月程度の海外留学をしてもらうことで、京都大学総長名の修了証を交付してもらうものです。(3)の留学については、大学が留学費用の補助をする予定です。詳しくは下のサイトを御覧ください。


国際高等教育院:国際教育プログラム
https://www.z.k.kyoto-u.ac.jp/for-internal/international-education-program


追追記

関連記事
6.  留学生と共にお互いの言語を学ぶLanguage Exchange

2. 英語の発音を学ぶ。


S-Q2: 正直、これまで英語の発音の勉強をほとんどしてこなかったので、スピーキングもリスニングも非常に苦手です。どうすればいいでしょうか。

S-A2: 甲南大学の伊庭緑先生が監修・作成された英語発音入門」のサイトは、日本人が苦手とする発音のポイントによく留意した上で発音の仕方を解説し、アメリカ英語とイギリス英語の音声サンプルを提供しているすばらしいサイトです。まずはこの無料サイトを使って勉強してみたらどうでしょうか。また発音を勉強すれば、リスニング力も確実に向上します。ぜひ「英語リスニング力を向上させるために」と「英語音声の特徴:口語英語の音声変化」の記事もごらんください。

以下のサイトは、わかりやすい動画と簡単な英語な英語でアメリカ英語の発音を解説しています。L-Q4で紹介されているLanguage ReactorというChromeブラウザー拡張機能を使うと、英語が苦手な人でも楽しく学ぶことができるでしょう。


Sounds American

https://www.youtube.com/c/SoundsAmerican/featured



もし本格的にアメリカ英語発音を体系的に学ぼうとすれば以下のサイトが有益です。


Learn to Pronounce Sounds in American English

https://pronuncian.com/sounds



追記
英語の音がつながって発音されることや、ストレスとリズムに関しては L-Q5をご参照ください。わかりやすくて短い動画を紹介しています。


追追記(2022/05/18)

AERAdotは2022/05/13の記事(「米アップルの元管理職・松井博さんが指摘する英語学習の問題点」)で、松井氏の英語学習観を伝えています。実際の現場経験から得られた貴重な見解だと考えますので、以下にその要旨を書いておきます。

・カタカナ発音では通じない。日本人がよくやる、舌を巻いて音をこもらせただけの「英語ふう」の発音はもっと通じない。

・発音の障壁がなくなるだけで英語を話すことが楽になる。また適切な発音ができるようになると、リスニングだけでなくリーディングとライティングのスキルも向上する。

・日本人が目指すのは「ネイティブ同様の発音」ではなく、「聞き手が一発で理解できる発音」。後者は大人になってからも訓練で身につけることができる。

3. フレーズを付け足し続けて話す。


S-Q3:実際に英語で会話をしようとすると、話す前に英文を構築するのに時間がかかり、話す機会を失ってしまいます。また話したとしても、自分の英語の文法が気になって、自信を失ってしまいます。どうすればよいでしょうか。

S-A3:まず理解していただきたいことは、日常的な機会に会話をする時の発話文が完全に文法的であることはほとんどないということです。

回答者は「京都大学 自律的英語ユーザーへのインタビュー」(日本語版英語版)の書き起こしや編集の作業に関わっていますが、インタビューをそのまま書き起こしした日本語が完全な文になっていることは稀です。たいていの場合、人はフレーズを付け足し続けて話しています。また文法ミスも珍しくはありません。周到に準備した上で大勢の人に一方的に話をするパブリック・スピーキング(あるいはモノローグ)ではない、通常の会話(ダイアローグ)では、母国語を話すときでさえ、文法は完璧ではありません

母国語でも少々の文法の乱れは気にせずにフレーズを付け足しながら人は話をしているわけですから、外国語を話す人が、まるで書いたような完璧な英文を話す必要はありません。この意味で、日常場面でのダイアローグでの瞬間的で即興的な英語産出は、アカデミック・ライティングでの長期的で計画的な英語産出とは考え方が異なります。会話では、とりあえず自分が言いたいことを、一気に言える長さぐらいのフレーズで表現してください。そのフレーズを付け足しながら、話を続け、相手の質問を受け付けてください。対話は、相手とあなたの2人で作り上げるものです。「まずは完全な英語を準備してから話し始めなければならない」という思い込みを捨ててください

なお、とりあえず口に出すフレーズは、適切なプロソディ(ストレスやイントネーション)と共に発話すると、相手によくわかってもらえますし、話をしている自分もいい調子になってきます。リスニング力はスピーキング力の基盤となりますので、ぜひ「英語リスニング力を向上させるために」の記事もご参照ください。

4a. 英検1級の2次試験に落ちた。


S-Q4a英検1級の2次試験に落ちてしまいました。2次試験での問答を再構成したのがこの書き起こしです[ウェブサイトには不掲載]。ご助言をいただけますでしょうか?

S-A4a:英検1級の2次試験は与えられた命題 (proposition) に賛成か反対かをまずは2分間スピーチで述べるという形ですが、書き起こしを見る限り、最初と最後の部分は、定型的な表現で無難に述べています。 (I don't believe [Proposition]. There are two reasons. および For these reasons, I believe [Proposition])

しかし真ん中のBody paragraphの部分を見ると、結局その部分で主張をサポートしているのかどうかわかりにくい曖昧な言い方になっています。さらに、そのサポートがpropositionの中にある "socially and economically" のどちらの観点に関するサポートなのかほとんどわかりません。ですから最初と最後の主張は明確でも、その理由が説得力ある形で述べられていません。試験官も、聞いていてそのあたりがもどかしかったのではないでしょうか。

ある程度準備して話すスピーチでは、パラグラフ・ライティングに準じる形で論を展開することが有効でしょう。下のW-Q6/A6を読んで、今一度英語圏で「論理的」とされている話の構成法を確認してください。

さらに2分間スピーチの後の質疑応答ですが、質問に直接的に答えるのではなく、YesともNoともとれる文が続いています。これも試験官を戸惑わせたのではないでしょうか。「話がわかりやすい人は、最初に結論を述べている」とは、ある院生へのインタビューでも聞かれたことばです。少なくとも英語で話をする時は、最初に明確な結論を述べ、次にその理由や例などを述べ、最後にもう一度結論を繰り返すという形で話す習慣をつけてはどうでしょう。

どうでしょう、こういったことに気をつけながら、ここで一度、英検1級2次試験のような形でスピーチを行ってみますか?(S-Q4bに続く)

4b. スピーキングテストでは割り切って話す。


S-Q4b: [S-A4aを受けて英語スピーチを行った後の発言] 最初の簡単な会話ではリラックスできていたのですが、いざスピーチの内容を考えるとなるとたくさんの内容が浮かんできて整理するのに苦労しました。そして理由を述べるために"First"と言った瞬間頭が真っ白になって何も言えなくなってしまいました。どうしたらいいでしょう。

S-A4b:今回は「小学生のスマホ利用を制限するべきか」というトピックで話そうとしたわけですが、1分間の準備時間の間に、子どもの立場から考えた制限肯定と制限否定の意見と、親の立場から考えた制限肯定と制限否定の意見を考えた上で、話をまとめようとしたわけですね。

さきほどからいろいろなお話を聞いていて、相談者の方は日頃からとても物事を緻密に考える人だという印象を受けていました。今回も目論見としては、Aの立場からの肯定と否定を述べ、次にBの立場からの肯定と否定を述べどの意見にも説得力があることを認めた上で、それらの見解を統合する自分なりの立論をしようとしたわけです。しかしそれは1分間の準備と2分間の発表のスピーチとしては欲張りすぎかもしれません(笑)

上のスピーチ構成は、いわば弁証法的に「正-反-合」 (thesis-antithesis-synthesis) の流れで結論を出すやり方、しかも「正-反」を2回繰り返した上で「合」をまとめるものでした。これは長い時間をかけて推敲しながら書くエッセイとしては面白いかもしれませんが、誤解を恐れず表現してみるなら「たかだか語学力」の出来不出来を示すショート・スピーチでは欲張り過ぎでしょう。日本語の思考力の高さと英語での表現力のギャップが大きい人が陥るパターンと言えるかもしれません。

今度から、語学試験のスピーチ課題でYesともNoとも立論できる命題を出された場合は、とりあえずどちらの立場で言うかを恣意的に決めて、その立場だけで論じてみてはどうでしょうか。今回のように「Aの観点からの正-反、Bの観点からの正-反、AとBの両方の観点を踏まえた上での合」のように総合的に語ろうとするのではなく「Aの観点からの正」の部分だけ準備してそれを2分で落ち着いて話すわけです

「Aの観点からの反」や「Bの観点からの正か反」については、たぶん試験官が質問で尋ねてくるでしょうから、それらの立論はスピーチの後の質疑応答に任せてください。語学試験は思考力よりも語学力(=言語形式と言語構成法についての技能)を評価していると割り切ってスピーチに臨んでみてはどうでしょうか

実は回答者はこういった「試験対策」 (test-taking strategy) は個人的には嫌いなのですが、相談者のように誠実に考える人が、その思考力ゆえに語学の試験に不合格になることが不合理だと思うので、敢えて自分の思考力をごまかさないギリギリのところでスピーチを作る方略を提案する次第です。

5. Googleの発音判定とアルファベットによる発音表記

S-Q5:最近、Google検索は、単語の発音音声を提供するだけでなく、単語の発音練習もしてくれることを知って驚きました。

"How to pronounce ..." と "..." のところに発音を知りたい語をタイプ入力すると、発音画面が出てきます。そこにあるスピーカー・アイコンを押すと発音が聞こえてくることは前から知っていました。また、発音にはアメリカ発音とイギリス発音があり、発音速度を遅くできることも知っていました。

ですがこの前、気がついたのは、マイクのアイコンもあることです。そのマイク・アイコンを押してパソコンのスピーカーに対して発音をすると、発音判定をしてくれます

その判定はかなり細かく、「△△の音を付け足したように聞こえる」「○○の箇所の発音が違う」「この箇所は○○ではなく□□に聞こえる」「□□ではなく○○と言ってみるようにせよ」「母音が強すぎる」といった具体的な指摘をしてくれます。さらにその点の改善をするためのヒントと音声教材も提供してくれます。また自分の発音を録音した後に出てくる青色のスピーカー・アイコンをクリックすると自分の発音を聞き直すこともできます。その上の黒色のスピーカー・アイコンをクリックするとモデル発音を聞くことができますから、両者を比較して自分の発音の様子をチェックすることもできます。このサービスが無料で提供されていることに私は驚いています。

ですが、いくつか問題があります。

第1の問題は、Googleの発音判定が厳しく、なかなか合格が出ないので心が折れそうになることです。

第2の問題は、Googleが採択している発音表記は、学校で少し習った発音記号ではなく、普通のアルファベットを組み合わせた独自の方法なのでわかりにくいことです。「aaではなくuhと言ってみるようにせよ」といったGoogleの助言もわかりにくくて困ります。

ご助言をいただけますでしょうか。



S-A5: このサービスについて私も慌てて試してみましたら、私のWindowsパソコンではChromeブラウザーで "how to pronounce ..." あるいは "... pronunciation" と入力するとマイクアイコンのついた発音画面が出てきました。FirefoxやEdgeのブラウザーでは出てきませんでした。

追記(2022/06/10)Googleの使用言語は英語に変えてください。使用言語が日本語だとPracticeの機能は使えないそうです。

少し調べてみるとこのサービスは2019年頃にスマホ上で試験的に実施されていたようです。ですが、現在、私のスマホ(iPhone/Googleアプリ)で試してみるとマイクアイコンは出てくるのですが、発音判定が出ないなど動作が不安定です(2022/05/14現在)。ですから、このサービスはまだ開発途中のものだと考えるべきでしょう。

しかしご相談いただいた2つの問題は、今後、このようなサービスが整備された時にでも当てはまるものですから、ここで多少の助言を致します。

第1の問題は、2つの部分に分けることができます。Googleの判定がやや厳しいことと、何度発音しても合格しないとやる気を失うということの2つです。

最初のGoogle判定がやや厳しめというのは当たっているかもしれません。私もいくつかやってみましたが、V-Q2で紹介したスマホに標準装備されている英語音声入力ならまったく問題なく認識される発音も、このGoogle判定では不備を指摘されます。スマホの音声入力は、世界中の多くの英語話者に日常的に使われる音声認識ですから発音の容認度が高いと思われます。他方、Google判定は、さまざまな発音分析を行っていますから、判定は厳しくなるのでしょう。

例えば "theatrical" の最初の母音が(/i/でなく)/Ⅰ/であると、通常のスマホ音声入力ではそのまま "theatrical" と認識しますが、Google発音判定はそれら2種類の母音が混同して使われていることを指摘します(/i/と/Ⅰ/の発音の違いについてはこちらで学んでください。ちなみに回答者は今、このウェブ上でIPAを適切に表記できず困っていますが、下のGoogle式pronunciation respellingは/i/と/Ⅰ/を "i" と "ee" と表記しています)。

また回答者は、最初に意識的に発音を習ったのがイギリス英語でしたので、イギリス式で発音した英語(例:authentic) は母音が違うとして不合格になりました。ですが現時点でイギリス英語での発音判定サービスは提供されていません。

こういった点から考えますと、「発音にはこだわってアメリカ英語で覚えたい」と思っている人はGoogle発音判定を使い、「発音は通じればいい」と思っている人は標準的な英語の音声入力ソフトを使っていればいいのではないでしょうか。(注)

(注)同時通訳の達人とも呼ばれた村松増美先生は、ある講演で次のような発言をしていました。

自分はアメリカ英語発音もイギリス英語発音もできるが、あえてどちらともいえず、強いて言えば日本式の英語発音をしているアメリカ英語を話すと関係者に「この通訳者はアメリカ側の人間だ」と思われるし、イギリス英語を話しても同じように邪推されるからだ。もちろん日本式の英語発音といっても、どこの国・地域の人にもすぐにわかってもらえる明瞭度をもっているべきだ。

英語を実用的に使う人の卓見として参考になるかとも思いましたのでここに記載しました。


しかしいずれの音声入力方法でも、自分の発音が、自分の思う通りに認識されないことが続くととたしかに心は折れそうになってしまいますね

気落ちするのは、たとえ「□□ではなく○○と発音しなければならない」とわかっていても、その2つの音の具体的な発音方法を知らないから、自分でどのように努力していいかわからないからです。

才能のある人は「耳コピ」でなんとなくできるようになるのですが、多くの人はコツを教えられないと途方に暮れるばかりです。

ですから発音の仕方を知らない人はまずS-Q2およびL-Q5で紹介されているサイト、あるいは適切な発音教本で、発音方法の理屈(メカニズム)を学んでください。 

理屈だけ学んで実際に練習しなければ上達しません。しかし、逆に練習ばかりしても、どこを目指しているのかわからないままに試行錯誤ばかり続けたら上達しません。発音の仕方を学ぶのはそれほど難しくありませんから、まずはS-Q2およびL-Q5で紹介されているサイトを参照してください。

以上、第1の問題については、自分が獲得したい発音のレベルに応じて、Google判定かその他の標準的な音声認識アプリを選択すること、そして発音認定されないことが続くなら発音方法のメカニズムを勉強すること、というのを回答といたします。


第2の問題は、Googleが発音記号 (International Phonetic Alphabet: IPA)でなく、通常のアルファベットを組み合わせて発音を表記する方法 (pronuniciation respelling) を使っていることから生じています。


Pronunciation respelling for English
https://en.wikipedia.org/wiki/Pronunciation_respelling_for_English



このpronunciation respelling法は、タイプライターでも発音を示すことができるので英語圏では昔から多く使われています。

ただ問題は、出版社や機関によってその表記法が微妙に異なることです。幸い、上のWikipedia記事にはpronunciation respelling法の一覧が掲載されていますから、それを見ていればこの方法にも慣れると思います。

ちなみにGoogleが採用しているpronunciation respelling法は以下の通りです。表記の後の丸括弧の中にその発音の典型例の語を書きます(太字部分が当該発音の部分)。注意が必要な表記は青色で示します。

母音

a (cat), ei (day), ehr (hair), aa (father), aar (arm), e/eh (let), ee (see), eer (here), i (pit), ai (by) , aa (pot), ow (no), aa (caught), or (north), oy (noise), u (took), oor (tour), oo (soon), aw (out), uh (cut), ur (word), uh (about), r (butter), yoo (view)

u (took), oor (tour) はIPAでしたらΩを上下逆にした記号の発音ですが、oo (soon)yoo (view) は /u/ の発音です。これらの発音の違いについてはこちらを参考にしてください。

子音

ch (church), g (game), h (hat), j (judge), ng (thing), s (sauce), sh (ship), th (thin/this), y (yes), zh (vision)

※ thに関しては無声音有声音の区別がありません。

Pronunciation respelling法については上の表記などから慣れてください。

しかし、それよりも大切なのは、耳から覚えることかと思います。メディアの発達で最近は音声の再生も容易ですから、発音の表記を眺め続けるのではなく、何度も音声を再生して耳を慣らしてください。

ついでながら、2つほど気になったことを書いておきます。1つはGoogleなどの企業のサービスは厳密には「無料」ではないということです。私たちはほとんど自覚がないうちにたくさんの個人情報をこういった企業に提供していますし、そこが提供する広告を見ることに多くの時間を割いています(広告を見ていなくても、検索結果などで誘導を受けています)。現在はいくつかの私企業が世界中で覇権的な権力をもってしまっている時代だという認識は必要でしょう

もう1つは上でも少し述べましたが、特定の英語母語話者集団の発音に近づくことばかりを求めてしまうことについてです。英語を実用的に使うことを考えるなら、発音はいろいろな人が聞いてもそれほど苦労せずにわかってもらえれば--comfortablly intelligibleであれば--よいでしょう。もちろん、それ以上に特定の国・地域・社会階層の人々の発音に近づこうという希望を抱く人が、その目標に向かって努力を続けるのは個人の自由ですから、それについて他人があれこれいうべきでもないでしょう。

と、長くなりましたが、テクノロジーに使われずに、テクノロジーをうまく使いこなしながら、学習をしてゆきましょう。



追記(2022/05/18)

Chromeブラウザー上でGoogleを使うと一切タイピングをすることなくマウス操作だけで快適に英単語の勉強ができます


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6. 留学生と共にお互いの言語を学ぶLanguage Exchange

S-Q6: 先日ある人から多くの大学には "Language Exchange"と呼ばれるプログラムがあり、それに登録すると留学生とペアになり、お互いの言語を教え合い・学び合うことができると聞きました。

例えば英語を学びたい日本人学生がそのプログラムに登録すると、英語が得意で日本語を学びたい留学生とペアになり、その二人はある時は日本語で話し、ある時は英語で語り、互いの会話相手になって言語を学び合うわけです。二人の間での合意さえあれば、簡単な作文の添削をすることもできると聞きました。また言語はもちろん英語だけでなく、他の言語を得意とする留学生とペアを組むこともできるそうです。

信頼できる京大の留学生とこのような交流をすることができれば、外国語を学びたい日本語話者の京大生にも、日本人と友だちを作りたい京大への留学生にもありがたいと思います。

京大にこのような "Language Exchange" はありますか?


S-A6: あります。まずは本学の留学生ラウンジ「きずな」のウェブサイトに行ってください。


留学生ラウンジ「きずな」
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/facilities/campus/kizuna



そこにある「きずなオンライン言語交換」がいわゆる "Language Exchange"のプログラムですので、ぜひここから登録してください。



きずなオンライン言語交換
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/facilities/campus/kizuna/event



なおこの留学生ラウンジ「きずな」ではイベントを開催したりメーリングリストを発行したりしています。



きずな月例イベント
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/facilities/campus/kizuna/event

「きずな」メーリングリスト
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/facilities/campus/kizuna/contact



また留学生ラウンジ「きずな」の施設には、海外留学資料や日本人学生のためのTOEFL・TOEIC・IELTSなどの語学資格関連のテキスト(貸出可能)を備えたリーディングルームや、サロンやオーディオルームもあります。本部構内の正門を入ってすぐに左折(西方向)してしばらく行ったところにある建物ですので、ぜひ一度訪ねてみてください。

留学生ラウンジ「きずな」の施設案内
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/facilities/campus/kizuna/info


ことばは本来は教科書や機械からではなく、人間から学ぶものです。どうぞ京大の「きずな」を使ってあなたの世界を広げてください。

関連記事

1. 英語を話す機会を見つける

1. 目的を明確にしたリスニング課題を設定する。


L-Q1
:  リスニング力を向上させようとして、英語のニュース動画を流し続けていますが、なかなか力がつきません。どうすればいいでしょう。

L-A1:スポーツや楽器の練習と同じで、英語力向上のトレーニングにも適切な課題設定が必要です。自分の力よりも少しだけ高い課題を設定してください。そしてその課題ができなかったのはなぜなのかを分析してください(とりあえずは本当は何と言われていたのかをチェックするだけで結構です)。

また、リスニングの題材そのものを適切なものにするだけでなく、Chromeブラウザーの英語字幕自動作成機能などを使って英語字幕をつけたり消したりすることによって、課題の難易度を設定したり、自分の聞き取りの成否を確かめることができます。

本格的な分析をしようと思えば、深澤俊昭 (2015) 『改訂版 英語の発音パーフェクト学習事典』(アルク)などの網羅的な本を使うこともできます。英語の音声的特徴を知ることにより、リスニングの困難点が明らかになってゆきます。簡単なまとめでしたらこのウェブサイトの「英語音声の特徴:口語英語の音声変化」を見てください。

また、自分がよく知っている分野の英語を聞くと、自分の知識と興味のおかげで学習が進みます。題材選択にも有効活用してください。 詳しくは「リスニング力を向上させるために」という特集記事をごらんください。

2. 自分の知的興味に即した英語動画。


L-Q2
:  リスニング力をつけようとは思って英会話番組を視聴するのですが、正直、会話の内容が面白くなく、勉強が続きません。どうすればいいでしょう

L-A2: 「好きこそ物の上手なれ」です。自分が面白いと思う内容の英語を聞きましょう。幸い今は、Chromeブラウザーを使って英語を聞けば英語の字幕が自動に出てくる機能があります(さらにLanguage Reactorの拡張機能を加えると言語学習が非常に容易になります:L-Q4)。その字幕の助けを借りるなら自分の知的興味に即した英語動画を自分に最適の英語リスニング教材にすることができます。ぜひ好きな話題に関する英語動画をウェブ検索で探してください。

もしとりあえず始めるサイトを1つ紹介するとすれば、Khan Academyをお勧めします。数学でしたら小学校レベルから高校レベルまで、自然科学や社会科学なら高校レベルの教材が無料で提供されています。自分の好きな教科を「英語ではどう説明しているのだろう」といった好奇心からで結構ですから、探してみてください。

Khan Academy
https://www.khanacademy.org/
https://www.youtube.com/user/khanacademy

さらにTED-Edを、YouTubeで見て、さらにPlaylist(再生リスト)で興味あるトピックを選ぶと、知的な内容の英語動画を連続して楽しむことができます。

TED-Ed
https://ed.ted.com/
TED-Ed: Playlist (YouTube)
https://www.youtube.com/teded/playlists


また下のYouTubeチャンネルは無料で高校・大学レベルの数学を英語で学べるということで人気を博しているようです。この欄の回答者は数学に弱いのですが、このサイトで人工知能の深層学習 (deep learning) の数学的な考えを学ぶことができました。とりあえず面白そうな動画を探してみてください。

3Blue1Brown
https://www.youtube.com/c/3blue1brown/featured


ある理系の学部生は、以下のYouTubeチャンネルを、英語の勉強のためというよりも純粋な楽しみのために見ていると教えてくれました。数学が好きな人なら、内容に惹かれて自然に聴き込んでしまうかもしれません。

MindYourDecisions
https://www.youtube.com/@MindYourDecisions

3. 学術英語のリスニングはやはり難しい。


L-Q3:
 自分の知的関心に即した英語はやはり難しすぎて、それを聞き続けることが困難です。


L-Q2/A2を読み、さらに「英語リスニング力を向上させるために」の特に「方法1:自分の興味関心に直結した英語を自分のペースで聞く習慣をつける」を面白く読みました。そもそも自分が興味がある内容についてリスニングする方が効果的であるということは納得できます。

しかし私はまだリスニング力が足りていないようで、私が知的に興味があるサイトで英語を聞こうとしても、難しすぎてなかなか継続できません。何とか一度聴き通しても、それを毎日続けることは困難です。自分はやはり駄目なのかなとも思えてきま


L-A3: 勉強における教材でも、スポーツにおける練習課題でも、その人に適したものが一番です。逆に言うなら、勉強や練習の成果がうまく出ない場合は、教材や練習課題の選択が適切でないことを疑った方がいいでしょう。 どうぞ自分を否定しないでください

相談者の方の場合は、英語を母語とする講師が、世界中の英語学習者のために作成した英語学習用のポッドキャストを使ってみたらどうでしょうか。まずは学習者用に作られた英語教材で基礎的なリスニング力をつけるわけです。 (もちろん、あくまでも自分の知的興味を優先し、YouTubeなどの再生速度を遅くするという方法もあります)。

以下、とりあえず3段階のレベルでポッドキャストを紹介します。それぞれのURLを書いていますが、音楽のストリーミング配信サービスの中のポッドキャストで探してもらえますと、そのサービスを使えるスマホなどでも聞くことができます(以下のポッドキャストは、少なくともSpotifyでは利用可能です)。もちろん指定URLのサイトでも聞くことができます。

これらは学習用のポッドキャストですので、どれも短い時間で終わるようになっています。一般に、基礎訓練の時期は、できそうでできないレベルの課題を何度も繰り返して行い、実力を少しずつ付けることが薦められています。多くの内容をただ聞き流すよりも、1つの内容を何度も聞いて自分のリスニング力の弱点を確認していく方が効果的かもしれません。自分で自分の学習をよく観察して、自分で学習課題を設定するようにしてください。

(1) 英語が非常にゆっくりしゃべられているポッドキャスト

もちろん、このスピードでもリスニングが難しいと思う人もいるでしょう。その人は、このポッドキャストをパソコン・ラップトップでChromeブラウザーを使って聞いてください。Chromeブラウザーから英語を再生すると、ブラウザーが自動的に英語を字幕化してくれます(よくわからなければブラウザーの「設定」を操作してください。

最初はChromeの自動英語字幕機能で英語を確認しながら聞いてください。次に字幕機能を消して聞いてみれば、いい練習になるはずです。

(1.1) VOA Learning English: Intermediate Level
https://learningenglish.voanews.com/p/5610.html
Voice of Americaはアメリカ英語を学ぶ外国人のための啓蒙活動を行っています。特にIntermediate Levelで提供されているプログラムは、かなりゆっくりの英語で話されているので英語を苦手としている人には有益です。


(1.2) Listening Time
https://podtail.com/podcast/listening-time/ 
英語リスニングが苦手な人を対象としているので、かなり遅いスピードで英語がしゃべられています。

(1.3) Thinking in English 
https://thinkinginenglish.blog/ 
これは(1.1)ほど英語がゆっくりではありませんが、明らかに学習者向けに丁寧に発声していますからリスニングもそれほど難しくないはずです。またこのポッドキャストは使われている語彙の解説が丁寧ですので、リスニングと同時に語彙学習もできます。


(2) BBCが提供している学習者用のポッドキャスト

以下のポッドキャストは、(1)に比べると少しスピードが早いように思えるかと思いますが、やはり学習者用の英語ですから、英語母語話者向けのニュースなどに比べれば聞きやすいはずです。
また、BBCが世界中の英語学習者のために作成していることもあり、解説(語句の説明やトランスクリプション(書き起こし)など)も充実しています

(2.1) 6 Minute English
https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/features/6-minute-english 
気軽なトピックを6分以内で語っていますので、何度も聞くのに適しています。 

(2.2) Learning English News Review 
https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/course/newsreview 
内容は時事ニュースですが、ただニュースを流すのではなく、ニュースで使われた英語を解説しているので、語彙や表現力をつけるのにも役立ちます。

(2.3) Dramas from BBC Learning English 
https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/features/drama 
内容は、小説などをドラマ化したもので、通常の映画やドラマに比べて、あきらかにゆっくりした英語が吹き込まれています。とはいえ音声吹き込みはプロの俳優によるものですから、興味深く聞くことができます。感情をどのようなリズムやイントネーションで表現すればよいのかが自然にわかります。会話が多いのでスピーキング力をつけるのにも役立ちます。また、ストーリーに集中したら「英語を勉強している」という感覚を忘れることができます。


(3) 中級者向けのポッドキャスト

やや英語が自然なスピードに近づいてきますが、やはり学習者向けの英語ですので、リスニング訓練に適しています。(1)と(2)のレベルの英語が物足りなく思えてきた人にお薦めです。

(3.1) RealLife English Podcast 
https://reallifeglobal.com/radio-podcast/ 
話題は気軽なものでありながら、随所に英語学習を深める内容があります。

(3.2) All Ears English Podcast 
https://www.allearsenglish.com/ 
多くの人に聞かれているポッドキャストです。英語のスピードもだいぶ母語話者向けの英語スピードに近づいています。


以上、いくつかのポッドキャストをご紹介しましたが、もちろん他にもいろいろ良い学習教材はあるでしょう。もし何かよいものをご存知でしたら、ぜひこちらからお知らせください。"Take ownership of your learning"の精神で、自分にもっとも適した学習教材と学習方法を見つけてください



追記1

子ども向けのサイトですが、英語での感情表現について学びたいのでしたら、Storyline Onlineが面白いかもしれません。

Storyline Online

https://storylineonline.net/

Storyline Onlineではプロの役者が子ども向けの絵本を朗読します(画面にはイラスト・アニメーションが提示されます)。朗読の感情表現が豊かなので、英語の強弱や緩急が顕著です。弱く読まれるところは急いで読まれますし、人名などの固有名詞も出てきますので、YouTube/Chromeの字幕を外して聞くといいリスニングの訓練になります(そして感情を込めたスピーキングのコツも分かるでしょう)。もちろん「子ども向けの内容なんて馬鹿らしい!」と思っている方はこのようなサイトを敬遠するでしょう。しかし、たまには子ども心に帰るのも悪くはないと思っている方は、このサイトで学術英語やテスト英語では得られない英語力の幅を広げることができるでしょう。勉強に疲れた時などに視聴してみてはどうでしょうか?



追記2

下のL-Q4で紹介されているLanguage Reactorの「YouTubeカタログ」からは良質の学習者向け英語動画を探すことができます。

4. 英語学習に便利な動画再生アプリ (Language Reactor)。

L-Q4: Chromeブラウザーの自動英語字幕は非常に便利です。しかし、英語学習の点では、聞き取りができなかった箇所をもう一度(あるいは何度も)聞き返す機能などが欲しいです。いいアプリはありませんか?

L-A4: ChromeブラウザーにLanguage Reactorという無料アプリ(正確にはChrome拡張機能)をインストールしてください(Language Reactorのサイトに行き、「Chromeに追加」をクリック)。次からYouTubeおよびNetflixをChromeで視聴する時には、自動的にLanguage Reactorの拡張機能を使うことができます。リスニング学習に特に便利なのは次の6つの機能です。

Language Reactor

https://www.languagereactor.com/


(1) 英語書き起こしと日本語翻訳の字幕表示

Language Reactorが出す字幕では、英語(書き起こし)と日本語(翻訳)を同時に見ることができます(歯車アイコンの「設定」画面で「翻訳言語」を日本語に設定。翻訳は「専門家による翻訳を表示する」をお勧めします)。 日本語字幕を消したい時は「設定」画面で「字幕を非表示>翻訳を非表示」を選ぶと、日本語翻訳字幕が隠れます(ですがカーソルをその隠れた箇所に置くとその時だけ日本語翻訳を見ることができます)。日本語翻訳があるとどうしてもそちらに目が行きますし、目が行くと日本語はほぼ自動的に心の中で音声化されます。そうなりますと英語の音声と字幕に注意が割かれなくなりますので、英語学習の点では英語字幕だけをつけておくことをお勧めします。



(2) わからない単語の訳語をすぐに知る

字幕の単語の上にカーソルを置くとその単語の訳語が示されます。画面下の一行字幕(横)の単語の上にカーソルを置くと、再生が一時停止します。画面右の複数行字幕(上下)の単語でしたら、再生が停止されることはなく英語を聞き続けることができます。いずれにせよ知らない単語の訳語を簡単に知ることができますので、英語学習に便利です。



(3) 直前の箇所を聞き直す

(3a) キーボードの "S"

リスニング能力をつけるのに便利なのは、同じ字幕の箇所を聞き直す機能です。ただパソコンのキーボードの "S"を押すだけで聞き直しができます。何度も押して何度も聞き直せば、聞き取りのポイントを理解することができるでしょう。

(3b) キーボードの "←"

キーボードの "←" を押すと、前の字幕の箇所に戻ることができます。"S" よりも長い単位で聞き直す時に便利です。これらのキーボード上の操作は非常に簡単ですから、英語の聞き取りに集中することができます。



(4) 字幕ごとに自動的に再生を一時停止する

Language Reactor画面の右端の下の方にある "AP" というボタンをオンにすると一つの字幕の音声再生が終わると画面が自動的に一時停止します。キーボードのスペースバーを押すと再生が再開します。ディクテーションやリピートの練習をする際には便利かもしれません。(ただし字幕の区切りは必ずしも言語学習に最適な区切りではありません)。



(5) 英語のスクリプトと日本語翻訳を書き出す

気に入った動画の英語とその日本語訳のすべてを読みたい場合は、Language Reactor画面の右上にあるエクスポートのアイコン(歯車・設定アイコンの右)をクリックしてください。次に、現れたウィンドウで、ブラウザー上のHTML画面かExcelで読みたいかを選択して「エクスポート」アイコンをクリックしてください。字幕ごとの英語と日本語の一覧を見ることができるようになります。HTML画面は印刷することができますし、Excelファイルは印刷はもちろん加工も自由ですから、自分の勉強ノートとして使うこともできます



(6) 英語学習に適したYouTube動画を見つける

Language Reactorの画面の左端には「YouTubeカタログ」があります。これをクリックすると、字幕や翻訳などの点で英語学習に適したYouTube動画を探すことができます。Language Reactor画面をブックマークしておいてそこを開く習慣をつけておけば、さまざまな英語学習を速やかに始めることができます。(有料でNetflixを行動くしている人は「Netflixカタログ」からも良質な字幕を提供しているプログラムを選ぶことができます。)



以上、回答者が英語リスニング学習に便利と考える6つの機能について簡単に説明しました。特にキーボードの "S" と "←"をうまく使うと、リスニング困難な箇所を何度も確認できますから非常に役立ちます

例えば次のようなやり方は、リスニング能力を高める簡単な方法です。

・Language ReactorのYouTubeカタログを通じてYouTube動画を選んで再生する。
・聞く時には、左手の人差し指を "S" の上に、右手の人差し指を "←" の上においておく。
・英語はYouTube動画の画面を見ずに聞く
・聞き取れなかったら"S" や"←" を押して何度も聞き直す
・どうしても聞き取れなかったらYouTube画面を見て、その字幕で英語を確認する
もう一度画面から目をそらして英語を聞く。
・それでも聞き取りに自信がもてなかったらさらに何度も"S" や"←" を押して聞き直す

これら6つの機能以外にも、さまざまな機能がLanguage Reactorにはありますから、ぜひChromeブラウザーにLanguage Reactorをインストールしてみてはどうでしょうか。

Language Reactor画面をブックマークして、毎日決まった時間に必ずそのページの「YouTubeカタログ」から面白そうな動画を見つけて視聴し、聞き取りが難しい箇所は"S" と "←"で慣れるまで聞き直してください知らない単語があれば字幕の上にカーソルを置いてチェックし、本格的に勉強したい場合は書き起こしをダウンロードしてください


継続は力と言いますが、このLanguage Reactorは継続を容易にしてくれる便利なアプリ(Chrome拡張機能)です。




追記

無料のYouTube再生には、しばしば広告が入ります。有料のPremium契約を始めれば広告による中断がなくなり快適にYouTube視聴をすることができます。ですが契約を考える際には、その投資が自分の人生を活かすかどうかよく考えてからにしてください。

追追記(2022/06/17)

ある学生さんから、ChromeブラウザーにはAmazon Prime Videoの映画・ドラマ・アニメに字幕表示と辞書機能を追加する拡張機能があることを教えていただきました。NetflixではなくAmazon Prime Videoと契約している人は、この拡張機能を使って英語(および他の外国語)の学習ができます。

Subtitles for Language Learning (Prime Video)

5. 英語音声の特徴をわかりやすく解説している短い動画 (ElementalEnglish)



L-Q5:  リスニングが非常に苦手ですが、Chromeブラウザーの字幕(L-Q1)をつけたり消したりすることや、拡張機能のLanguage Reactor(L-Q4)で何度も聞き直すことによって、「いくら聞いてもわからない!」という焦りからは解放されました

また「英語音声の特徴:口語英語の音声変化」で、リスニングの困難点についても少しは理解できました。日本語と英語の発音・発声の仕方の違いをきちんと理解しておくとリスニングも容易になることがよくわかりました。

英語音声の特徴について、もう少し自分で勉強したいのですが、いい教材はありませんか?



L-A5: 現在は、YouTubeにも非常に有益な動画が掲載されていますが、下のサイトのConnected SpeechStress + RhythmのPlaylistは、リスニング力をつけるために役立ちます。それら2つのPlaylistを学習した上で、やや応用的な内容となっているPronunciation + Listening Practice in English!のPlaylistを視聴するといい復習になるでしょう。 



ElementalEnglish

https://www.youtube.com/channel/UC2zQDH2yG55rf3kU8cYXQSQ 



このYouTubeチャンネルのよいところは、説明が簡潔で本質的画面のキーワード表示が理解を助けるそれぞれの動画が短くまとまっている、という点です。

たいした時間はかかりませんから、とりあえずPlaylistを一度すべて見てから、気になる動画を集中的に見るという勉強法はどうでしょうか。もちろん集中的視聴の際はLanguage Reactorを使って気になるところを何度も聞き直し、自分自身でも発音してみることをお勧めします。

なお、このサイトが繰り返し伝えているのは、これらの英語音声に関する学習は、母国語話者のように話すことを目標とするものではない、ということです。(そのような目標設定をすると、非母語話者は永遠に不全感や劣等感にさいなまされるだけです)。英語学習者としては、「とりあえず英語のリスニングに困らなくなること」「それなりに他人に理解してもらいやすい発音・発声をすること」を目標にして英語音声の特徴を学び体得してください。






Connected Speech Playlist

https://www.youtube.com/playlist?list=PLytLOCUcYQj_ODAC4ixpqCc5qhwzSEwph



Connected SpeechのPlaylistで伝えられている重要なメッセージは、「英語母語話者は必ずしも速くしゃべっているのではなく、単語をつなげて発話しているから英語学習者には速く聞こえるだけだ」ということです。やはりconnected speech(連結発話)の原理を理解しておくことが英語を聞き・話す鍵となります。このPlaylistではその原理が非常に明快に説明されていますので、ぜひ一度御覧ください。

Connected Speech Playlistを構成している動画(Playlistの順に掲載)

Connected Speech & Linking | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=gAHUTKm_1n0&t=3s

h-deletion in Connected Speech | English Pronunciation 
https://www.youtube.com/watch?v=BBEEZwMj1AA

Connected Speech: Consonants + Consonants | English Pronunciation Lesson 
https://www.youtube.com/watch?v=e7VREyOLPz0

“h”-deletion with Connected Speech | English Pronunciation Lesson 
https://www.youtube.com/watch?v=55vpaD2p4xI

Consonant + Vowel Connected Speech in English Pronunciation 
https://www.youtube.com/watch?v=FVEBpS5XHO8

Connected Speech Practice | English Pronunciation Lesson 
https://www.youtube.com/watch?v=4VnSAr9No6k

Connected speech here? | A Quick Question 
https://www.youtube.com/watch?v=XUlxPKVF6E0

※これに加えて、下のStress + Rhythm Playlistの最後にあるDe-stressed Function Wordsもこの流れで聞いておくと、connected speechにおいて弱く発音される語についての理解が深まります。

De-stressed Function Words | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=R0_v3DwdbRA





Stress + Rhythm Playlist

https://www.youtube.com/playlist?list=PLytLOCUcYQj9555_Er15F5Kz8Z650AcL8


Stress + RhythmのPlaylistでの大切なメッセージは、「ストレス(強音と弱音の対比)がリズムを作り、それが英語の音楽性 (musicality)となる」ということです。ある音節を(音の長さ・強さ・高さで)目立たせる "stressing" とその逆を行う"de-stressing" という対立概念を理解すると、英語の聞き取りにも自信が出ますし、わかりやすく英語を話すことができるようにもなります。

Stress + Rhythm Playlist を構成している動画(Playlistの順に掲載)

Stress and Rhythm in English Pronunciation
https://www.youtube.com/watch?v=UbcEiFTmkQo

Rhythm Practice: Stress + De-Stress | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=FtTLEAA0Sbc&t=2s

"Whaddya" (what + do + you) | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=b-DugXTDwLQ

Same Verbs and Nouns + Syllable Stress
https://www.youtube.com/watch?v=yQoyhCEqf68

Emphasis in English | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=zL3bL9az3ts

Syllable Stress + Pronunciation Practice | Months of the Year
https://www.youtube.com/watch?v=OUjnPRgZKl0

Stress and Rhythm in English | A QUICK Overview
https://www.youtube.com/watch?v=yr1vRim4oHM

De-stressed Function Words | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=R0_v3DwdbRA

※ 上の動画の中で、月の名前の発音など中学英語レベルだと馬鹿にする人もいるかもしれませんが、英語音声の原理を学ぶという点では重要なことを伝えています。ぜひ一度はどの動画も丁寧に視聴し、必要に応じて自分でも発音することをお勧めします。





Pronunciation Practice Playlist

https://www.youtube.com/playlist?list=PLytLOCUcYQj9nUNF0EoqgTnfn1fYCFGiX

Pronunciation PracticeのPlaylistはやや個別的な内容を扱っています。ですから、上2つのPlaylistで英語音声の特徴を勉強した後で視聴することをお勧めします(逆に言うなら、リスニングをそれほど不得意としていない人はこちらから見てもいいのかもしれません)。

Pronunciation Practice Playlistを構成している動画(Playlistの順に掲載:一部の動画は上のPlaylistに含まれています)。)

Pronunciation + Listening Practice in English!
https://www.youtube.com/watch?v=ffgknw8B-y0

Pronunciation + Listening Practice in English | Ep. 2
https://www.youtube.com/watch?v=wSOuPCoy6Lc

“h”-deletion with Connected Speech | English Pronunciation Lesson
https://www.youtube.com/watch?v=55vpaD2p4xI

Pronunciation + Listening Practice: wh-questions | Ep. 3
https://www.youtube.com/watch?v=vU8GJ-34Yu8

Pronunciation + Listening Practice | Episode 4
https://www.youtube.com/watch?v=40GI_ldYIwg

Pronunciation + Listening Practice | Ep. 5 | Taylor Swift’s Blank Space “Starbucks Lovers”
https://www.youtube.com/watch?v=eUyd1rtwbm4

Pronunciation + Listening Practice | Episode 6
https://www.youtube.com/watch?v=tfWjOo7pffk

Pronunciation + Listening Practice | Ep. 7
https://www.youtube.com/watch?v=uXssO-xrIBQ

Pronunciation + Listening Practice | Ep. 8
https://www.youtube.com/watch?v=PxdfB0gfjxQ




追記
英語の個々の音の発音についてはS-Q2をご覧ください。

6. 日本語に訳しながら英語を聞く癖を取り除く。

L-Q6: 英語を聞く時も高速で日本語に訳しながら理解する癖がついてしまっています。ですから、少しでも訳に戸惑ったらそれをきっかけに、次々に来る英語を処理できなくなってしまいます。

また、仮に最後まで英語のストーリーを聞き通せたとしても疲れ果ててしまい、英語を聞くことから遠ざかってしまっています。これからどのようにリスニング力をつけるための学習を進めてゆけばよいでしょうか。



L-A6: 次々に流れてくる音声を処理し続けなければならない英語リスニングにおいて、日本語訳作成の過程を入れることは決して勧められません。頭の中での日本語翻訳で、聞き手は自分なりの日本語音声を生成します。そうなりますと、聞き手は外からの英語音声と内での日本語音声の2種類を同時に処理することになります。この負荷は大変なものです

リスニングの際に日本語訳を介入させる習慣を捨てて、英語で英語を理解する習慣をつけることが必要です。英語の音声変化がそのまま意味の変化の変化として感じられるように自分を再訓練するわけです。

この自分の心身を作り変える再訓練においては、「同じ教材を聞き続ける」「本当に聞きたい教材を選ぶ」「学習を習慣化する」という3つの原則を守ることが効果的かと思います。



(1) 同じ教材を何度も聞く

これまで日本語にしないと英語が理解できなかった人にいきなり「英語は英語で理解しろ!」と命令しても、その人がすぐに英語音声を直ちに理解できるようになるわけではありません。むやみやたらと多くの種類の英語教材を聞いて焦るよりも、同じ教材を何度も聞いて、英語を英語で理解する新しい習慣を確立してください。(注)

PCでYouTubeを視聴している場合、リピート再生したい動画の上でマウスを右クリックして、ループ再生 (Loop) を選ぶと、その動画が何度も再生されます。スマホでYouTubeを視聴する場合は、「再生リスト機能」を使うとリピート再生ができるそうです(詳しくはウェブで検索して調べてください)。

(2) 本当に興味がある教材だけを選ぶ

何度も聞くわけですから、自分が本当に聞きたい(あるいは自分がこのように語りたいと望む)教材を選んでください。とりあえずLanguage Reactorの左側のコラムにある「YouTubeカタログ」から教材を見つけてみたらどうでしょうか(TEDはあまりにも有名ですが、入門的な学術的内容でしたら案外TED-Edが面白かったりします)。

(3) 平日のリスニング学習を習慣化する

技能獲得の一般原則として、できるだけ学習の頻度を高くするということがあります。一ヶ月に一度だけたくさん英語を聞くよりも、平日は毎日少しずつ英語を聞く方が学習効果は高いでしょう。ぜひ平日の毎日のスケジュールのどこかにリスニング学習を入れてください。起床した直後の時間、通学時間、食事の時間(あるいは食後の時間)、授業の空きコマ、就寝前の時間などが代表的な時間帯です。要は「この時間帯・この場所なら必ず英語学習をする」というように自分を習慣づけたら長続きしやすいです。

(4) リスニングの目的を明確にして聞く

何度も聞く場合、それぞれに目的をもって聞くようにすると集中力を保ちやすいですし訓練の効果も高まります。逆に言いますと、目的意識なく何度も聞いているとなんとなく飽きてきます。飽きというのは学習がうまくいっていないサインですから、飽きを感じたら、聞くことの目的をはっきりさせたり、教材を変えたりしてください

目的には以下のようなものが考えられます(ChromeブラウザーにLanguage Reactor拡張機能をつけた上で、YouTube英語動画を視聴することを前提に書いています。音源がMP3でしたらL-Q7で紹介しているプレーヤーなどをダウンロードして使ってください)。自分に必要と思われる訓練を選んで行ってください。これらすべてをこの順番でやる必要はありません。

(a) 日本語字幕を見ながら聞いて意味を確認する。
(b) 日本語字幕を消して、その代わりに英語字幕を見ながら何度も聞いて、自分の英文処理能力の速度を目においても耳においても高める。
(c) スクリプトを読み知らない単語を調べて英語の語彙力を高める。
(d) 英語字幕も日本語字幕も消して聞いて、この教材に関してのリスニング理解力を以前よりも高め、少々わからない箇所があっても聞き通す力をつける。
(e) 英語字幕なしで聞きながら、分からない箇所はLanguage Reactorを使って「←」や「S」で何度も聞き直すことによって、英語音声の細部に注意を向ける。
(f) 画面から目を離して聞きながら、分からない箇所はLanguage Reactorを使って「←」や「S」で何度も聞き直し、その正解を画面の英語字幕を見て確認して、細部のリスニング力を確実なものにする。
(g) 目をつぶって聞いて、この教材についてのリスニング理解を完全に近くする。
(h) 英語字幕を見ながら、字幕の単語の音声が聞こえてくると同じタイミングで自分の中でも英語音声を心の中だけで再生して、表情を伴った音読の仕方を学ぶ。(=発声抜きのオーバーラッピング)
(i) 英語字幕を見ずに、聞こえた英語音声をそのまま心の中で再生して、「英語で考え、英語でしゃべる」ことのシミュレーションをする。(=発声抜きのシャドーイング)

※ スピーキング能力開発のためには、オーバーラッピングやシャドーイングを実際に発声しながら行うと口唇の運動訓練になります。ただし、リスニング用の教材をそのままオーバーラッピングやシャドーイングに使うと、速すぎて口が思うように動かないことがしばしば生じます。その場合はYouTube画面最下部にマウスをかざすと出てくる歯車アイコン(設定・Setting)で再生速度を調整してください。
ただ、運動技能獲得の基本は、最初は運動の正確さを重視、運動の速度は徐々に上げることです。間違った運動を繰り返すと、間違った運動技能(=癖)が定着してしまいます。いったんついた癖を取り除くことは容易ではありません。自分の発音は毎回自分の耳に入ります。そうなるとリスニングのときも、自分の偏った発音が聴こえてくることを予期することになります。もちろんそうなると聞き取りも失敗してしまいます。発声してのオーバーラッピングやシャドーイングを無理な速度で行わないようにしてください。




なお下の動画は技能習得について解説しています。効果的な学習のためにここで示されているような原則を大切にしてください。

How to practice effectively...for just about anything - Annie Bosler and Don Greene
https://www.youtube.com/watch?v=f2O6mQkFiiw&t=2s

The first 20 hours -- how to learn anything | Josh Kaufman | TEDxCSU 
https://www.youtube.com/watch?v=5MgBikgcWnY

7. MP3音源の巻き戻し再生をしたい

L-Q7:Language Reactorを使うことによって、Chromeブラウザーでストリーミング音源を巻き戻し再生(数秒前の音を聞き直す)できるのは非常に便利です (L-Q4)。同じような巻き戻し再生をパソコン上にあるMP3音源でも行うにはどうしたら良いですか

L-A7:確かに自分がもっているMP3音源も、ボタンひとつで巻き戻し再生ができるようになれば、リスニング力向上のためには非常に便利ですね。

回答者も慌てて調べてみたら、「教えてgoo」にいい回答がありました。

音声ファイルを1秒単位で巻き戻ししたい。

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9193608.html

以下、その回答をWindows PCを対象にしてもう少しわかりやすく説明します。あくまでも回答者が便利と考える方法を示していますので、詳しい説明は下の「公式マニュアル」をご参照ください。



(1) 無料のMP3プレイヤー「聞々(ぶんぶん)ハヤえもん」をダウンロードする。

以下のサイトから、「聞々ハヤえもん」をダウンロードしてください。


聞々ハヤえもん公式サイト
http://hayaemon.jp/



上のサイトが開かない場合は「窓の杜」でダウンロードすることもできます。


窓の杜:聞々ハヤえもん

https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/hayaemon/


Windows版公式マニュアル

http://hayaemon.jp/manual.html

(「聞々ハヤえもん」にはMac OS版も、スマホ版(iPhone・アンドロイド)もあります)



(2) タスクバーやスタート画面にピン留めする。

ダウンロードを完了しアプリを立ち上げてください。タスクバーに出てきた「聞々ハヤえもん」のアイコンを右クリックして、タスクバーやスタート画面上にピン留めしておくと、次から使いやすくなります。(なお、ダウンロードした "hayaemon" のファイルを「ダウンロード」のフォルダーに入れておくと、そのフォルダーをカラにした時に当然「聞々ハヤえもん」も使えなくなります。「聞々ハヤえもん」のzipファイルを解凍する時には、ハードディスク上のどこか安全な場所で解凍することをお勧めします)。



(3) 巻き戻し再生を設定

アプリ上部にあるツールバーの「システム > グローバルホットキー設定」をクリックして(図1)、その後に「追加」をクリックしてください。

220425a_hot key

さらにプルダウンメニューから「3秒戻る」を選択し(図2)、その上のセクション(図では「なし」と表示)に割り当てたいホットキーを押してください。

220425b_Rewind

割り当てるキーは、Lanaguage Reactorと同じような操作をしたいなら「←」を選択すればいいかもしれません。

またホットキーの割当を追加することもできます。「再生・一時停止」を「↓」に割り当てると、隣にある「←」と「↓」を押し分けることで「3秒戻る」と「一時停止」「再生」を行うことができるので便利です。

※注意:アプリが立ち上がっている時には、ホットキーに指定したキーをその他のアプリ(例えばワープロ)で使うことができなくなります。その他のアプリを十全に使うには「聞々ハヤえもん」を切ってください。



(4) 再生するMP3音源を選ぶ

いろいろな方法がありますが、アプリ上部にあるツールバーの「ファイルを開く」アイコンをクリックして選ぶ方法が簡単です(図3の赤丸

220425c_file

以上でとりあえず、3秒前の音声を簡単に聞き返すことができるようになります。自分のPCにあるMP3音源を使ってリスニング学習をする場合は、「聞々ハヤえもん」を使って、自分が指定したホットキーで簡単に巻き戻し再生を行ってください。


リスニング能力を鍛えるためには、この「聞々ハヤえもん」やLanguage Reactor (L-Q4) を使って難しい箇所を何度も聞き返すことが有効です。また、この「聞々ハヤえもん」は多機能ですから、当然、再生スピードを細かく調整することもできます。リスニング教材が難しすぎれば再生速度を遅くしてください。

それほどの集中的な学習ができない場合は、上にも書きましたがYouTubeのループ再生によって自分の好きな動画を何度も繰り返し自動的に再生して聞き流しをするといいかもしれません。(YouTube画面上を右クリックして「ループ再生」を選択)。

8. どこでも英語音声を文字化したい (Otter)

L-Q8Chromeブラウザーの自動字幕起こし機能は便利ですが、パソコンでウェブ上にある英語音声しか文字起こししてくれないのが不満です。英語が話されている場所ならどこでも使える英語音声自動文字起こしアプリはありませんか?

L-A8: 英語音声の文字起こしについては、現在、Otterというアプリが無料でスマホでも使えることもあり人気になっています(ただし無料版での文字起こしは毎月600分までです)。この他にもいろいろなアプリがありますし、AIの進化と共にさらに新しいアプリも出てくるでしょうから、それらを使ってみてはどうでしょうか。

ここではOtterについて述べますが、このアプリの便利なところは、次の2段階で仕事ができることです。

(1) 英語が話されている場所ではスマホ(あるいはタブレット)を使い、英語音声を録音すると同時に文字化する。

(2) 大きな画面をもつパソコンが使える場所ではパソコンを使い、文字起こしテクストを閲覧・編集したり、録音音声を聞き直す。

これら(1)と(2)の連動は、ユーザー登録をすることでデータがクラウド共有されることによって可能になります。もちろん話し手の英語発音や録音場所のノイズなどによっては、音声の文字化が100%正しくはならない場合もありますが、このようなアプリの使い方はかなり便利です。たとえば授業や学会発表をスマホで録音・文字化し、自宅に帰ってパソコンでそれらについて学び直すことができるからです。

ただし、2つの注意点を述べておきます。

1つは、英語を話す講師や発表者への配慮です。講義や発表を録音し文字起こししたい場合は、予め講師や発表者に許可を得るようにしてください。

もう1つは、このようなアプリが利用可能になったからといって、リスニング技能を育てる必要がなくなったわけではないことです。英語音声の自動文字起こしが可能になった現在もリスニング学習をするべきなのは、英語の音声的特徴(音楽にも似た英語らしさ)を身につけるためです。音声的特徴が身についていれば、アプリを使わなくともリスニングができるようになるだけでなく、スピーキング・リーディング・ライティングが上達するからです。

スピーキングは、自分が言いたいことを、勝手なやり方で口にすることではなく、相手が聞いて理解しやすいやり方で音声化することです。リーディングは、読み手が心の中で、目の前にある活字を表情豊かな人の声に変換すること、いわば「目で行うリスニング」です。さらにライティングは読み手に快適にリーディング(=目でリスニング)してもらうように文章を書くことです。詳しくは下の記事を読んでほしいのですが、リスニング学習を通じて英語の音声的特徴を自分のものとすることにより、英語力は確実になります。

英語リスニング力を向上させるために
1 はじめに:なぜ4技能の中でリスニング力向上を最優先させるべきなのか
https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/tips/contents_jp#frame-451

英語音声の文字化がAIにより自動的にできるようになると、確かにテープレコーダーしかなかった時代に米国留学して講義録音を何時間も書けて書き起こした方のような苦労は昔話になりました。しかし日本語とは異なる英語の音声的特徴を身につける必要性はなくなっていません。英語を音楽のように心地よく聞いて、歌を歌うように話せるようになるまで、学生時代にリスニング学習を意識的に行うことをお勧めします。その成果は、複利で増える一生の財産になるでしょう。


9. 弱く短くなる機能語を聞き取るための動画playlists (Rachel's English) (2022/07/06)

L-Q9: 実際に話される英語ではすべての語が均等な強さで発音されるわけではないことはよく承知しています。しかしそうだとわかっていても、弱く短く発音される語を聞き取ることがなかなかできません。どうすればよいでしょうか。

L-A9: 語は内容語と機能語に分けることができます。内容語 (content word)とは、名詞・動詞・形容詞・副詞などのように語彙的に豊かな意味をもっている語です。それに対して機能語 (function word) とは、冠詞・代名詞・前置詞・接続詞・助動詞などのように一定の文法的な働きを示す意味だけをもっている語です。この機能語は、実際に話される英語ではしばしば弱く短く発音されます

その場合、機能語は通常、辞書に掲載されている発音からは変化した形で発音されます。このように発音が弱く短くなることは "reduction" と呼ばれます。このreductionと、「口語英語の音声変化」で示した "assimilation" (同化)による音の変化と、隣接する語が一つながりに発音される "linking" (連結)などが重なることにより、英語は日本人にとって聞き取りにくいものとなります。

しばしばリスニングでは明確に発音される内容語さえ聞き取れていればメッセージはつかめるとも言われます。しかし機能語も文法的な働きをもっているわけですから、まったく無視するわけにはいきません。やはり機能語も聞き取ることが必要です。

ここではアメリカ英語を解説するRachel's EnglishというYouTube Channelの3つのplaylistsを紹介します。どれも無料で公開されているのが信じられないほど丁寧に作られていますので、ぜひこれらの動画を見て、機能語の弱く短い発音について分析的に理解し、リスニング技能を上達させてください

紹介するplaylistsは、最初の1つが実際の映画のシーンを分析し解説するもので、続く2つが発音の特徴の種類ごとに分析と解説を行ったものです。意味深いシーンから学ぶのが好きな人は前者を、理屈で理解するのが好きな人は後者を選べばいいでしょう。



さまざまな英語表現から発音の特徴を具体的に学ぶplaylist 

(1) LEARN ENGLISH WITH MOVIES

https://www.youtube.com/playlist?list=PLrqHrGoMJdTR_P8p95DY1RA8_gD4XEOmI

このplaylistは、有名なアメリカ映画のシーンを取り上げ、そこに見られる英語発音の特徴を解説する動画を集めたものです。映画のシーンはもちろん興味深いものですし、発音解説は台詞の英語を黒字で書き出した画面にイントネーションやリズムや発音の変化の様子を赤ペンで書き足す丁寧なものです。さらに解説される発音は何度も繰り返し動画が再生してくれますので、この動画を見ているだけで英語発音の特徴をかなり身につけることができます(技能習得には繰り返しが大切です!)。

初心者は次々に新しい学びをするでしょうし、英語発音にそれなりに慣れたと思っている人も「なるほど、たしかにそうだ!」と膝を打ちたくなるような発見があるでしょう。

映画のシーンと丁寧な解説と繰り返される英語の台詞で、思わずずっと見入ってしまう動画です。どうぞこのplaylistにある動画を数多く見て、リスニング力を高めてください。



発音の特徴ごとに分類して分析的に学ぶplaylists

(2a) ESL: Reduction and Linking

https://www.youtube.com/playlist?list=PL8A78F4E25D2280A1

(2b) Contractions

https://www.youtube.com/playlist?list=PLrqHrGoMJdTTFTj82QgVbRKxckdd0BrDV

上の (1) のplaylistは具体的な経験をさまざまに重ねながら学ぶやり方ですが、理屈好きの人はもっと発音の特徴ごとに分類した上で学ぶことを好むかもしれません。そんな人はこちらの2つのplaylistsをお勧めします。

なお、これらのplaylistsの動画は、発音の仕方も解説していますが、どうぞついでに発音も学んでください。自分で正確に発音できる音は確実に聞き取ることができます。発音能力の向上とリスニング能力の向上は連動します(「英語リスニング能力を向上させるために」)

以上、英語の機能語の聞き取りにくさをを克服するために、具体事例とその解説を重ねることにより学ぶplaylistと、発音の特徴別に分析的に発音の仕方も同時に学ぶplaylistsの2種類の動画集をご紹介しました。非常に優れた動画ですので、ぜひ御覧ください。

ただ最後に重要なことを付け足しておきます。

これらの動画の解説はすべて英語で行われます。リスニングが苦手な人が、リスニング力をつけるため英語の解説を聞き取らねばならないというのは一種の矛盾ですから、これらの動画はChromeブラウザーの自動字幕を使って、字幕の助けを借りながら英語を聞いてください(ただし、(1) のplaylistの動画で映画のシーンの英語を聞き取る時は、まさにそれが聞き取りにくいことがポイントですが、その時だけは字幕から目を離してください)。

ですがこの動画に限らず、英語を学ぶには英語で学んだ方がはるかに効果的ということを理解してください。日本語でなされる英語の解説と英語でなされる英語の解説では、後者の方が量的にも質的にも圧倒的に充実しているからです。英語が苦手な人は、せめて英語を読んで英語について理解できるだけのリーディング力(特に字幕を瞬時に読み取る速読力)を身につけてください。

英語について調べて学ぶために、日本語ではなく英語を使うようになる時が、学習者の "tipping point" となるでしょう。

1. 多読用英書を見つける。 


R-Q1: 高校時代の恩師から、「英語力の基礎はリーディングであり、ぜひ大学では速読ができるようになりなさい」と言われていましたが、英語の授業や専門の授業で読む英文を読んでいても、速読力がついている感触を得られません。どうしたらいいでしょうか。

R-A1: 速読力をつけるには、やや易しめの本を多く読むことが有効です。ぜひ吉田南構内にある吉田南総合図書館の2階にある「英語学習コーナーを訪れてください。英語学習者用に語彙を少し簡易化して書かれた多読用英書が517冊準備されています(2021年9月時点の数字です)。

その他にも、英語圏で古典とされている本やロングセラーになっている本もたくさんあり、このコーナーの英語書籍は2590冊(2021年9月時点)となっています。ここで自分のレベルや興味にあった本を見つけて読んでください。

なお、授業の間の時間を図書館で過ごすようにすれば、授業の予習・復習も快適な環境で行うことができますし、気が向いたら書棚を覗いてみれば自分の知的世界が広がります。また仲間と話ができる図書館分室「環ON(わおん)」もあります。ぜひ吉田南総合図書館を活用してください(利用案内はこちらをクリック)。

2. 英語で書かれた無料のデジタル教科書。

R-Q2:インターネットには大学レベルの学習をするための多くの動画があることを知っていますが、私はやはり落ち着いて本を読んで学習する方が集中できます。一人で英語を通じて学べる教科書を提供するサイトなどはないでしょうか?

R-A2:その目的にぴったりなのがOpenStaxです。OpenStaxはRice大学に基盤を置く非営利団体です。OpenStaxは無料のデジタル教科書を提供しています。教科書は、大学レベルの数学、自然科学、社会科学、人文学、ビジネスなどのトピックで提供されています。高校レベルの教科書もいくつか出版されています。



OpenStax
https://openstax.org/subjects

3. 小説を音読してみたら気持ちがいい。

R-Q3: 3回生の授業でDickensのGreat Expectationsを読んでいます。なんとかこの勉強を実用英語につなげようと思い、ある時、本文を音読してみました。声に出して読んでみると小説の文章はきれいに書かれていて読んでいて気持ちがいいことに気がつきました。こういった音読も実用的な英語使用には役立つと思いますが、どうでしょうか。

R-A3: 授業を主体的に使いこなそうとする大変にいい勉強の仕方をしていますね。授業は自らの学びを促すためのきっかけですから、ぜひこれからも授業の活用法を自分で考え実行してください。美しい文章を音読して、その調べや律動を身体で感じることが、実社会で英語を使うことにつながるというのはまったくその通りです。身についた英語の音楽性(=心地よい音声的特徴)が、英語を聞く・話す・読む・書く経験を快適なものに変えてくれるからです(参考:「英語リスニングを向上させるために」)。

オバマ大統領は演説のうまさに定評がありましたが、その背景には彼が大学時代に英詩を勉強していたからだという説もあります。英語の響きの美しさを知っていると、それが自分が話したり書いたりする英語にも反映することは十分にあることです。


■ 作品の朗読を聞く

ちなみに著作権が切れた書物についてはウェブ上に朗読音声がたくさんアップロードされていることをご存知でしょうか(これらの朗読音声サイトを作ってくださった方々には心から感謝したいところです)。

Great Expectationsでしたらすぐに以下のサイトが見つかりました。

ChapterVox: Home
https://www.youtube.com/channel/UCT2tOnAEBBt2GtkLmlPtviw

Great Expectations by Charles Dickens FULL Audiobook
https://www.youtube.com/watch?v=HeYodU8Gwik&list=PLdiacl_Q6LOZAv-wDvnltDYn5ZUXXvu1c


このサイトにはその他にもたくさんの作品の朗読を連続して聞けるplaylistがあります。

ChapterVox: Playlists
https://www.youtube.com/c/ChapterVox/playlists


著作権の切れた古い作品については、ぜひ「作品名 audiobooks」でウェブ検索して、名作を耳からも楽しんでください。その際、L-Q4でも紹介しましたようにChromeブラウザーLanguage reactorの拡張機能をつけると、聞き直しや一時停止が簡単にできますから便利です(また何度も同じ動画を再生したい時は、再生画面を右クリックして「ループ再生 (Loop)」を選択してください)。

なお、著作権のある作品の朗読については、各種のオーディオブックサイトで聞くことができます。たとえばAudibleはもともと米国の会社ですから、英語の書籍の朗読も多く扱っています。朗読を購読するにはお金がかかりますが、お気に入りの本でしたらその投資の価値はあるでしょう。

■ 自分の朗読をAIに音声認識させる。

以上、朗読を聞くことについて主に述べてきましたが、質問者の方のように、英語を身につけるためには最終的に自分で声に出して読んでみるべきでしょう。

たとえば、自分で本当に気に入っている箇所を暗唱するために、何度もその箇所を音読するのはどうでしょうか。

音読する際にはぜひ以下のAIアプリの音声入力を使ってください。自分では正しいと思っている発音でも、特に /p/, /t/, /k/,/f/, /v/, /th/, /l/, /w/などの音は平均的な英語の発音から離れていることがわかるでしょう(AI音声認識判定は完全ではありませんが、目安にはなります)。

単語の音声認識でしたら、V-Q2でも紹介しましたようにスマホのLINEアプリに音声入力するぐらいで済みますが、作品の朗読となりますともう少し長くなりますので、例えば下の2つの方法などを取ることが考えられます。

Otterを使う

L-Q8で紹介したOtterというアプリ(スマホ・タブレット・パソコンに搭載可能)を使う。

Google Documentを使う

ここで紹介されているやり方で、Google Document(スマホ・タブレット・パソコンで利用可能)に音声入力する。


以上、質問者の方がやっている、授業で要求されたリーディング課題に、音読という一種のスピーキング活動を自ら組み合わせるという素晴らしい方法に、さらに朗読を聞くというリスニング活動やAIに発音判定させる朗読というスピーキング活動を統合することを提案しました。一般に、さまざまな側面からの活動を組み合わせると記憶の定着は向上します。ぜひ積極的に自分で英語学習をデザインしてください

1. 文体感覚を育てる


W-Q1: 大学院生です。これまで英語論文を執筆する際に、頻出表現集の中から適当に文を選んでそれを組み合わせて文章を書いてきました。しかしこのやり方では、いつまでたっても、どれがよい文であるかの判断の感覚が育ちません。またそうやってつぎはぎして書いた文章の統一感があるかどうかもわかりません。どうすればいいでしょうか

W-A1: おっしゃる通りで、他人の文を借り続けるだけでは、なかなか自分なりの文体感覚は育ちません。文体感覚を育てる方法の1つの方法は、英語論文を読む際にできるだけ「自分ならこう書けるだろうか。自分ならどう書いてしまうだろうか」といった問題意識をもつことです。

 もう1つの方法は、実用的な文体論の本を読むことです。遠田和子 (2018) 『究極の英語ライティング』(研究社)などは例文も練習問題も多いので、文体感覚を身につけるのに役立つかもしれません。また、自分が書いた英文を音読してみると、どこが不自然なのかがわかる場合もあります。

2. 学術英語ライティングの基本を教える英語サイト

W-Q2: 教養・共通教育が終わってしばらくしてから、ようやく学術的な英語を正確かつわかりやすく書くことの重要性がわかり始めました。しかし今は、専門の授業が忙しくてなかなか英語ライティングを学びなおす時間がありません。どうすればいいでしょうか。

W-A2科学誌のNatureが、科学者が書くべき文章作法についてまとめたEffective Writingというページがあります。まずはこのページを参照してみたらいかがでしょうか。

Effective Writing
https://www.nature.com/scitable/topicpage/effective-writing-13815989/


 
また、GopenとSwanによるThe Science of Scientific Writingという記事は、1990年に公刊されて以来、科学者のための文章指南として世界中の多くの科学者を啓発しつづけています。こちらもぜひお読みください。

The Science of Scientific Writing
https://www.americanscientist.org/blog/the-long-view/the-science-of-scientific-writing



もしアカデミックライティングについて基本から学び直したいなら、i-ARRC英語教育部門が作成した教科書を使ってください。京都大学学術リポジトリ「KURENAI(紅)」の「685 国際高等教育院 > コレクション:全学統一ライティング教科書」からダウンロードすることができます。教科書はEGAP Writing 1とEGAP Writing 2です。毎年改訂されていますので、最新版をお使いください。

3. 英文校閲ソフトの使いこなし方


W-Q3
:とある英文校閲ソフトの有料版を使っています。スペリングや文法はもちろん、時には文体上のチェックもしてもらえるので、英文を書く時に非常に重宝しています。しかし、文法的に間違っていないはずなのに、間違いだと指摘されることがあります。どうすればいいでしょうか。

W-A3:最近の英文校閲ソフトはずいぶん性能がよくなってきました。ですが、人工知能と人間の知能は質を異にするものであり、完全に同じものではありません。ですから、校閲ソフトは時に不必要な指摘をすることがあります。また逆に、当然指摘してくれるはずの機械的なミスをソフトが見逃すこともあります。

 1つの対応法として、例えばGoogle Documentといった校閲機能を備えた別のソフトに同じ英文を入れて確認することがあります。しかしそのソフトも人工知能ですから完全ではありません。

 となりますと、現時点での人工知能を使ったアプリは、「24時間365日働いてくれるのでありがたいが、たまにうっかりミスをする助手」ぐらいに考えておいた方がいいかもしれません。

4. 英文法・語法の基本を英語で学びなおしたい


W-Q4:同じく英文校閲ソフトをよく使っている者です。自分が書く英文にはいろいろな文法ミスがあるので、ソフトの指示にしたがってそのまま修正しています。しかし、修正するばかりでは自分で理解したとはいえず、修正が自分の実力につながっていないと感じています。そうなると上の人の質問にあったように、英文校閲ソフトが間違った指摘をした時に修正することができません。どうすればよいでしょうか。

W-A4::たしかにそのとおりで、英文校閲ソフトからにせよプロの校閲者からにせよ修正指示をもらっても、それに機械的にしたがっているだけなら、英語力の向上はありません。「英語を使う(特に書く)」という観点から、英語の文法や語法をもう一度学んでおくことは、英語を使う長いキャリア生活を考えると有効な投資と言えるでしょう。

 その点でお勧めできる本は、Oxford University Pressのロングセラーである Practical English Usageです。紙媒体版を机の上に置いて適宜参照して使い慣れることも1つの方法ですし、アプリ (Apple Store, Google Play) 版を購入し、スマホやタブレットで使うのも賢い利用法です。

また、このように英語の本で英語の文法・語法を学んでおくと、自然に文法用語を英語で覚えます。その知識があると、英語についてちょっとしたウェブ検索する際にとても便利です。日本語で検索するよりも英語で検索する方が、はるかに多くの良質な情報を入手することができます

5. 頻出表現集 Academic Phrasebank


W-Q5:上の質問 (Q1) で英語論文執筆用の頻出表現集があると書かれてあります。便利なものを教えて下さい。

W-A5:ウェブ上で無料で使われるものとしては、The University of ManchesterによるAcademic Phrasebankをお勧めします。

Academic Phrasebank 
https://www.phrasebank.manchester.ac.uk/


これは、"Being Cautious," "Being Critical," "Classifying and Listing"などの大項目、"Introductory phrases," "General meanings or application of meanings, "Indicating varying definitions" などのそれぞれの大項目の中の中項目別に、学術論文での頻出構文を掲載しています。いい表現が思い浮かばない時、あるいは自分の手持ちの表現を増やしたい時に使ってください。

なおこの英語教育部門ウェブサイトのデータベースでは、自律的英語学習・使用に便利なサイトやアプリを紹介しています。こちらもぜひご活用ください。

6. 学術ライティングの基本:Unity and Coherenceの原則を貫きながらParagraph Writingの形式で書く


W-Q6
: Academic essayが何なのか、わかったようでわかりません。結局、ライティングの授業ではどのような文章を書くことが求められているのでしょうか?

W-A6: Academic essayの1つの定義は、「知的なトピックについて、Unity and Coherenceの原則を貫きながらParagraph Writingの形式で書く文章」です。この原則と形式を保つことで複雑で難しいトピックについてわかりやすく書くことができます。ここではacademic essayの構成要因であるUnity and CoherenceとParagraph Writingについて簡単に説明します。

 Unity and Coherenceですが、まずUnityとは、余計な論点を省いてある1つのトピックだけについてだけ書くことです。"One idea in one unit"とも表現できます。1つのunit(例えばエッセイやパラグラフ)には1つの事だけしか書きません。Unityによって読者は速やかに文章の主旨をつかめます。次にCoherenceとは、説明・論証を読者にわかりやすくするために、話の流れと表現を整えることです。"First," "Furthermore," "however," "therefore" といったつなぎことば (transitional expressions, discourse markers) を過不足なく使って読者の思考を導きます。Coherenceが整った文章は正確かつ速やかな読解を一層容易にします。このUnityとCoherenceの2つの原則を貫くことにより、読者は書き手の主張について迷わずに考えることができます

 Paragraph Writingとは、1つのパラグラフ内部でも複数のパラグラフの間でも、文章を1つの主張についての「始め・中・終わり」の3つの要素で構成させる書き方です。「始め」では、自分の主張を最初に提示します。いわば結論を簡単に最初に述べるわけです。「中」では、その主張・結論を読者に納得してもらうために必要な事柄を詳しく述べます。「終わり」では再び主張・結論を提示し、読者にそのパラグラフが何についてのものであったかを確実に理解させます。UnityとCoherenceを徹底して、主張から外れたことを書かないようにしてください。Paragraph writingとは、1つの段落の内部でも、複数の段落からなる文章全体でも、この主張提示・主張立証・主張再提示の3部構成で終始一貫した文章を書くことです。 

 パラグラフの内部構成についてもう少し詳しく述べますと、1つのパラグラフの中の3要素は、Topic Sentence, Supporting Sentences, Concluding Sentenceと通常呼ばれます。Topic Sentenceでそのパラグラフで扱う1つのトピックについての主張を命題の形で示します。「Xについて書きます」とただトピックについて述べるだけでなく、「XはYです」などとトピックを主語とした命題(=真偽・賛否の判断ができる文)の形で文を書きます。Supporting Sentencesは、その命題が正しいことを示す理由や例などを述べます。ここが筆者が一番述べたい箇所ですが、それをいきなり述べても多くの読者はその骨子がわからないからその前にtopic sentenceでその概要を示しておくわけです。Concluding Sentenceは、命題に新しい表現を与えて読者にその命題の正しさを再認識させます。 Paragraph Writingでは、日本語の文章によくあるように最後にならないと主張・結論がわからないように書くのではなく、最初に主張(トピックの命題)を示し、次にそれを立証し、最後にもう一度要点を主張します

 複数のパラグラフ間の構成についても考え方は同じです。3つの部分は通常、Introduction, Body, Conclusionと呼ばれます(実験論文のIMRAD (=Introduction, Method, Result, and Discussion) 構成は1回生の授業では必ずしも扱いません)。Introductionのパラグラフではその文章で扱う1つだけのトピックを、3段階で導入します。読者の注意をひく (Hook/Topic Sentence) 、背景説明をする (General Statements) 、立証する命題を示す (Thesis Statement) の3つです。Bodyのパラグラフでは、3段階で具体的に命題を立証します。立証のための理由や証拠などの提示 (Supporting Point Statement) 、詳しく具体的な説明 (Supporting Point Details) 、理由や証拠の再提示 (Supporting Point Restatement) の3つのステップです。なお、立証すべきポイントが複数ある場合は、Bodyのパラグラフを複数作成します。Conclusionのパラグラフでも、段階で文章全体をまとめます。立証した命題の再提示 (Thesis Restatement) 、Bodyの議論の要約 (Summary of the Body) 、この命題の意義の説明等 (Final Comment) といった3段階です。要は、文章全体でも、主張提示・主張立証・主張再提示の3段階で文章を一貫させるわけです。この意味でParagraph Writingは 3 x 3 の基本構造をもっていると言えます。 3つの内部構造をもった3種類の段落が統合されているからです。

 Academic essayは、1つのパラグラフの中でも複数のパラグラフの間でも、Unity and Coherenceの原則を貫いて1つのUnit では1つの主張だけについてわかりやすく文章をつなぎ、かつParagraph Writingの基本である主張提示・主張立証・主張再提示の3部構成を徹底する文章です。この基本の徹底により、読者は「この著者はこのトピックについていろいろなことを言っているが、結局、何を言いたいのだろう?」などと迷うことなく、書き手が提示する主張・命題の吟味と理解に集中することができます。こうしてみますとacademic essayの形式で書くことは、必ずしも学術目的に限られた書き方ではなく、わかりやすい記述・主張をする際に広く応用できる書き方であることがわかるでしょう。さらにはスピーチを行うときにもこの構成で話せば、聞き手がよくわかる説得力あるスピーチとなります。ぜひ授業でacademic essayの書き方に習熟してください。



補記

ただし、実際の学術論文の構造は「主張提示・主張立証・主張再提示の3部構成で終始一貫した文章」ということばだけで要約できるほど単純ではありません。それについては例えば下のW-Q8をご参照ください。上の説明でもIntroductionパラグラフの最初の要素は「読者の注意をひく (Hook/Topic Sentence) 」であり、厳密な意味での「主張提示」ではないことにお気づきになった方もいらっしゃるでしょう。

このW-Q/A6では1回生用に基本原理をわかりやすく提示するために、「主張提示・主張立証・主張再提示の3部構成で終始一貫した文章」という要約をしています。まずは基本原理を理解しそれが難なく実行できるようにしてください。基本原理を身につけたら、その基本原理が伝える精神を活かすために、さらなる工夫をして基本原理から意図的に逸脱することも後に学んでください。

7. 英語ライティングの授業は就活にも役立つ


W-Q7
:京都大学が研究者養成を重視し、ライティングでAcademic Englishを教えるというのは理解できます。しかし私のように別に研究職を目指していない学生も多くいます。そんな学生にとって、英語ライティングの授業は意味があるのでしょうか。

W-A7:京都大学での英語ライティング科目は、一般企業等の非研究職に就職する人にとっても十分意味のある授業です。端的に言えば、就活(就職活動)に役立ちます

 例えば、NHKラジオの番組テキスト『ことば力アップ 2021年10月-2022年3月』が示唆していたことは、就活で重要なことばの使い方が、英語ライティング科目で教えられているパラグラフ・ライティングの原則とUnity (One Idea in One Unit) の原則と共通していることです。その番組は、エントリーシート (ES) の記述でもっとも大切なこととして、パラグラフ・ライティングの原則の1つである「1文目で結論を述べる」ことを挙げています。(p. 13) その理由は、結論がなかなかでてこない文章はもどかしく大量のESを読む担当者の印象に残らないから、および、最初に結論を伝えることで聞き手に話の方向性を理解させ興味を持続させることができるからです。(p. 24) 加えてその番組は、Unityの原則と同じことを強調しています。自己PR動画でもウェブ面接でも対面形式の面接でも重要なことは、文章記述と同じこと、すなわち「迷わず1つの話に絞ること」だというわけです。(p. 19) このように、英語ライティングで徹底する文章作法は就活の際に直接的に役立ちます。

 上の例は就活ですが、パラグラフ・ライティングやUnityの原則は、忙しい職場での必須のコミュニケーション作法です。就職後は、特に注意しなくても、1つの話には1つのポイントだけについて語る習慣が身についていれば何かと役立つでしょう。同様に習慣化しておくべきなのは、結論を最初に述べるパラグラフ・ライティングの作法です。どうぞ一般企業就職希望の皆さんも、英語ライティング科目で、大量の情報を処理しなければならない現代において不可欠なコミュニケーション作法を徹底的に身につけてください

8. 英語論文の内部構造 (Section-Move-Step-Phrase) を具体的に知る


W-Q8
:自分もそろそろ英語で論文を書かねばなりません。しかし、W-Q/A6で示されている「主張提示・主張立証・主張再提示」の構成をパラグラフ内でも複数パラグラフの間でも貫くことは、学術ライティングの基本かもしれませんが、実際の英語論文ははるかに複雑です。

薬学研究科の院生のインタビューを読みますと、その方は自分が読んだ専門の英語論文を読み直して論文の構成や書くべき内容を理解したとありますが、私はまだそれほど英語論文を読んでいるとも思えませんし、自分の分析力にもそれほど自信がありません。ご助言をお願いします。

W-A8:ご指摘の通り、1回生のライティングの授業では学術英語ライティングの基本を扱いますので、「主張提示・主張立証・主張再提示」つまりIntroduction-Body-Conclusion型をもっぱら教えています。

1回生の授業においてIMRaD型 (Introduction, Methods, Results, and Discussion / Introduction, Materials & Methods, Results, and Discussion)で書かせようとしますと、1回生に独自の実験や調査などをさせる必要が出てきます。英語学習と並行で実験や調査を指導するのは時間的にかなり困難ですので、全学統一教科書ではIMRaD型を特に扱っていません。また、最近増えているIRDaM型 (Introduction, Results, Discussion and Materials & Methods) についても言及していません。そうしますといくら基本がしっかりしていればその応用は簡単と言われても、3回生や4回生の学生さんとしては不安になるかもしれません。

幸い、最近の研究では、IntroductionやResultsといったSectionをさらにMoveと呼ばれるパートに分割し、そのMoveをさらに細かくStepと呼ばれる下位区分に分けることや、それぞれの部分で頻出する定型表現を特定することも進んでいます。

生命科学・基礎医学分野では河本健・石井達也 (2022) 『ライフサイエンス トップジャーナル300編の「型」で書く英語論文』、臨床医学分野でしたら河本健・石井達也 (2018)『トップジャーナル395編の「型」で書く英語論文』(ともに羊土社)などがその例になります。

SectionとMoveとStepについて河本・石井 (2022) の解説を使ってもう少し詳しく説明します。例えばIntroductionというSectionは、「研究対象の紹介」「先行研究と問題提起」と「本研究の紹介」の3つのMoveから構成されます。言い換えますならこれら3種類の内容をこの順番で書くことが、Introductionの典型というわけです。さらに「研究対象の紹介」というMoveは、多くの場合「研究対象の背景情報(定義・重要性・特徴)」「研究対象に関する課題の提示」という2つのStepで構成されます。Moveのレベルにも言及されるべき内容と順番の典型があるわけです。最近の研究は、このようなSection-Move-Stepの階層構造で学術論文は構成されていると分析しています。この階層構造をわかりやすく図示すると以下のようになります(河本・石井 (2022) 『ライフサイエンス トップジャーナル300編の「型」で書く英語論文』のp.6の図を、著者・出版社の許可を得て転載)。

220322_Section_Move_Step_Phrase

表現について述べますならば、それぞれのMoveにはキーワード・キーフレーズがあります。さらにそれぞれのStepでは頻出する定型表現(典型的な単語を含む特定の構文)があります。(下にある「追記」を参照のこと)。

これから英語論文を書く皆さんは、これらの本を参考にしたり、自分の分野でのMoveとStepを分析してそれぞれの定型表現を抜書きしたりしたらどうでしょうか京大英語ユーザーインタビューでは、多くの院生が自分で使えそうな表現をノートに記録していると述懐していましたが、その記録をより体系的に作成するわけです。



加えて生命科学の分野でしたら、Life Science Dictionaryという強力なデータベースが無料公開されています(このプロジェクトの代表は本学大学院・薬学研究科・生体機能解析学分野教授の金子周司先生です)。このデータベースには、単語(英語もしくは日本語)を入力するとそれに相当する日本語もしくは英語が出てくる英和・和英辞書機能だけでなく、シソーラス機能とコーパス機能も搭載されています。

シソーラス機能は、通常の、ただ類義語だけを列挙するシソーラス(例えばTHESAURUS.COM )と異なり、MeSH (Medical Subject Headings) に準拠し、同義語(異表記)、概念ツリー、関連語を教示してくれます。ユーザーは、論文を書く際により適切な専門用語を探すことができるでしょう。

コーパス機能は、指定した単語が使われている数多くの例文を表示します。指定語が中央に現れる形で表記されるので、その語と共に使われる表現もよくわかります。もちろんこの例文は、すべて生命科学・医学の論文から取られたものです(Life Science Dictionaryについてもっと知りたい方は、「LSDプロジェクトについて」「ご利用ガイド・よくある質問(FAQ)」のページなどを御覧ください)。



Life Science Dictionary
https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdproj/ejlookup04.pl



生命科学・医学を専攻の方はこのLife Science Dictionaryをブックマークしてぜひ常用してください。


もちろん、ここまで分野特異的な分析をせずとも、一般的な分析結果でしたら上のW-Q/A5で示されたAcademic Phrasebankなどでも公表されています。例えば “Being cautious” (慎重な態度を示す)という大項目の中に、"Devices that distance the author from a proposition," (命題に対して著者が距離を取っていることを示す)"Being cautious when giving explanations," (自分が示す説明に対して慎重な態度を示す)"Advising cautious interpretation of results" (結果の解釈に対して慎重な態度を促す)などの中項目があります。それぞれの中項目を見ると、数々の具体的表現が小項目として掲載されていますから、これらの表現の中から適切な表現を選ぶことができます。上の分野特異的で本格的な分析に併せて、こういった一般的な表現分析もお使いください。

要は、これまでの応用言語学の研究の蓄積を利用して、より効率よくかつ効果的に分析を行ってみてはどうでしょうかというのが回答者からの提案です。




追記

臨床医学分野の論文を題材にした河本健・石井達也 (2018)『トップジャーナル395編の「型」で書く英語論文』(羊土社)には、 臨床医学論文執筆支援プラットフォームがウェブ上に追加されました。これは非常に情報量豊かなサイトであり、臨床医学を専攻する人は常用し、関連分野を学ぶ人もぜひ一度は見ておくべきものかと思います。



臨床医学論文執筆支援プラットフォーム
Key Phrases of Clinical Medical Research Articles based on Move Analysis
https://home.hiroshima-u.ac.jp/tkawamo/ClinicCorpusV2-1.html



ここでもSection-Move-Stepの枠組みで英語表現が分析されています。表紙ページにはIntroduction, Materials & Methods, Results, DiscussionのSectionが示されていますが、例えばそのうちのIntroductionをクリックするとそのSectionを構成する典型的なMove、およびMoveの下位構成要素であるStepが具体的に示されます。

さらにそのページの解説をクリックするとそのStepにおけるMoveとStepの機能などが説明されています。To keywordsをクリックするとMoveごとのキーワードが示されそのキーワードをクリックするとLife Science Dictionaryのコーパス検索結果が示されます。To Key phrasesをクリックすると こんどはStepごとにキーフレーズが示され、これらのキーフレーズもLife Science Dictionaryのコーパス検索結果に紐付けられています。

Section, Move, Stepが解説され、keywords/key phrasesが具体的に示される至れり尽くせりのサイトと言っても過言ではありません。英語教師である回答者は、これらのサイトを無料で公開してくださっている生命科学・医学の研究者の方々のご努力に脱帽です。生命科学・医学を専攻する学生の皆さんも、どうぞこの先輩研究者の熱意に応えてこれらの著書やサイトを活用し、先輩方以上に国際的に活躍してください




謝辞

ライフサイエンス トップジャーナル300編の「型」で書く英語論文』と『トップジャーナル395編の「型」で書く英語論文』の筆頭著者であり、Life Science Dictionaryの研究分担者でもある広島大学の河本健先生には、ご著書の中の図の転載を許可していただいただけでなく、この記事に対する専門的なご助言もいただきました。大変にご多忙な中、本サイト・本コーナーの趣旨をご理解し、貴重なお時間を割いていただいた河本先生には厚く御礼申し上げます。

9. 英語でメールを書く場合の注意点


W-Q9
:ある先輩は、英語母語話者の先生にメールを書いたら、「非常に無礼だ」と怒られたそうです。英語でメールを書く際に注意すべき点を教えて下さい

W-A9:学生さんの一部は、英語だけでなく日本語でも十分に失礼なメールを書きます(笑)。今の学生さんは、親密な関係性の中でSNSメッセージを送るのには慣れていても、ちょっと距離をおくべき関係性の中でメールを送受信することには慣れていないので、ついついSNSの時のような感覚でメールを送って失敗するのかもしれません

ともあれ、失礼なメールを送るのは、受信者にとっても送信者にとっても益になりません。このサイトの「英語学習のコツ/Tips & Techniques to Develop English Skills」の中に、メールの書き方についてのガイドを掲載しましたので、ぜひ参考にしてください。



英語でのEmailの書き方
https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/tips/contents_jp#frame-558

Writing Effective Emails Tips & Techniques
https://www.i-arrc.k.kyoto-u.ac.jp/english/tips/contents#frame-555



なお、上の記事では英語でのメールの書き方に特化しましたが、ウェブで検索をすれば日本語でのビジネスメールの書き方のサイトがたくさん見つかります。日本語でのメールの書き方についても勉強しておくことをお勧めします。礼儀作法は、自分を危険に晒さないための護身術とお考えください。

10. 英語論文執筆について体系的に解説したガイド

W-Q10:他大学の学部からこちらの大学院に進学した者です。さっそく英語の論文執筆で苦労しています。たしかに上のW-Q2は役立ちました。アカデミックライティングについて、Effective Writingは具体的な注意点を手短にまとめていますし、The Science of Scientific Writingは読者の心の動きに配慮した書き方が必要であることを教えてくれています。

ですが、私としてはもっと英語論文執筆について体系的に解説したガイドを必要としています。できれば手元において常に参照できるような印刷媒体の方がありがたいです。

もちろん、i-ARRC英語教育部門による全学統一ライティング教科書は参考になります。ですが、やはり一般学術目的の英語 (English for General Academic Purposes: EGAP) 向けの教科書ですので、私としてはもっと専門に即したESAP (English for Specific Academic Purposes: ESAP) 向けの本が欲しいところです。何かいい本はありますか。

W-A10保田幸子 (2021) 『英語科学論文をどう書くか:新しいスタンダード』(ひつじ書房)をお薦めします。出版社のウェブサイトでは目次が公開されています。

時間がない場合は、「第2部 基本編」からお読みください。ここでは論文のストーリー(構成・流れ)の重要性を説いた上で、英語論文執筆の具体的な指針を示していますNature Communications誌に掲載された実際の論文を例にとって、Introduction, Method, Results, Discussion, AbstractそれぞれのMoveを解説しています(Moveとは、Introductionなどのセクションを構成する複数のユニットです。それぞれのMoveが論の展開の上で果たすべき機能をもっています。詳しくはW-Q8をご参照ください。)

「第2部 基本編」は、さらにそれぞれのMoveでの代表的な英語表現を日本語訳と共に多く掲載しています。加えて、Editorとの重要なコミュニケーション・ツールであるカバーレターの書き方も解説・例示していますから、この「第2部 基本編」を読み、常に参照するだけでも論文執筆の大きな助けとなるでしょう。

基本についてある程度学んだら「第3部 発展編」をお読みください。ここでは、<科学論文の表現は徹底的に客観的・中立的・厳密でなくてはならずI/weは使ってはいけない>といった通念が過剰な一般化であることを、実際の論文例や英語ライティングの研究論文の成果をもとに示しています。具体的には、「書き手の態度」 (attitude marker) 「強調表現」 (booster)「緩衝表現」 (hedges)「自己言及」 (self-mentions) などが著者の主体的な関与や責任を表現していることを例示しています。英語表現には日本語対訳も付けられています。ただこれらはやや発展的な表現ですから過剰に使ってはいけません。最初はこれらの観点から実際の論文英語を観察する方がいいかもしれません。これらの表現を使う感覚を身につけることが初心者にとっては優先事項でしょう(ライティング力の基盤はリーディング経験の量と質です)。

さらに時間があればぜひ「第1部 準備編」も読んで下さい。上で述べた科学論文の英語表現についての通念がどのような背景から生じたのかが解説されています。そういった理解をもつことによって、研究のさまざまなジャンルの中で言語をどう使い分けるべきかについての洞察が高まります。

11. 学術英語ライティングについての英語動画(2022/05/27)

W-Q11英語でもある程度まとまった文章が書けるようになりたいと改めて思い始めた3回生です。W-Q6で言われていることはわかるが、W-Q2で紹介されているページは少し難しく感じるぐらいのレベルです。

自分はリスニングも鍛えたいので、まとまった英語の文章の書き方を教えてくれるいい英語動画などがあればそれを視聴してライティングについて学べるので一石二鳥だと思っています。何かいい英語動画はありますか?

W-A11:「学術英語ライティング」の基本は、質問者のいう「まとまった文章」と考えることができます。以下のサイトはすべてEAPFoudation.comYouTube Channelに掲載されているものですが、非常にわかりやすく学術英語ライティングの基本を教えてくれています。ぜひ(英語学習に便利なChromeブラウザー・Language Reactorを使いながら)これらの動画を見て、まとまった文章の書き方を学んでください。

全般的な事柄について

What is Academic Writing? 7 Features of Academic Writing
https://www.youtube.com/watch?v=Cq4J8bPBcck

What is the Writing Process?
https://www.youtube.com/watch?v=jmYxaCnbL5o

文体や語法について

Academic Style
https://www.youtube.com/watch?v=n9d9EXWIkuI

Writing objectively: how to create an objective tone in academic English writing
https://www.youtube.com/watch?v=5zUlP0vj58w

Coherence and Cohesion in Academic Writing
https://www.youtube.com/watch?v=3EzJICqv3WY&t=67s

Transition Signals in Academic Writing, Video #1: Definition, Grammar, Problems
https://www.youtube.com/watch?v=NaUxyneDRCE

Transition Signals in Academic Writing, Video #2: Types of Transition Signal
https://www.youtube.com/watch?v=MHeLqXZu93c&t=25s

Hedging (cautious language) in Academic Writing
https://www.youtube.com/watch?v=kajoEOfT8w4&t=8s

Reporting Verbs in Academic Writing
https://www.youtube.com/watch?v=ZE4yH4wxpj4

剽窃や引用などについて

What is Plagiarism and How to Avoid It?<
https://www.youtube.com/watch?v=4iw8J4Bwygs

What are Citations and References?
https://www.youtube.com/watch?v=TLPVhQZKl0M

その他

Cause and Effect essays
https://www.youtube.com/watch?v=ZMD7VjsHfBA

Compare and Contrast Essays
https://www.youtube.com/watch?v=sBSOY1mYcyk

Note-taking styles for academic English
https://www.youtube.com/watch?v=MHhuG4Dw3B8

1. 『京大・学術語彙データベース 基本英単語 1110』の単語音声

V-Q1:3回生です。近々、英語資格試験を受ける必要があるので問題集をやりはじめましたが、予想以上に語彙を忘れているので自分でも驚き始めました。1回生の時に使った『京大・学術語彙データベース 基本英単語 1110』を使って復習しようと思うのですが、何かいい方法はありますか。 

V-A1:語彙学習の際に、正確な発音を覚えていないと、リスニングの時に認識できません。また、その語をしゃべっても通じず、書こうとしても正しいスペリングで書けないことが多いです。語彙学習の際は、必ず正しい発音を聞いて、自分でもそのように発音できるようにしておいてください。回り道のようですが、この手続をしないとリスニング・スピーキング・ライティングでその語をうまく使えないからです。

『京大・学術語彙データベース 基本英単語 1110』には、出版社の研究社が音声を提供しています。現在は、下のウェブサイトからすべての単語の発音を聞くことができます。この本を使って勉強する際にぜひ活用してください。確認用に一度通して聞くのも良いかもしれません。

『京大・学術語彙データベース 基本英単語 1110』単語音声

https://www.kenkyusha.co.jp/modules/09_kyodai_podcast/index.php?content_id=1


また現在、語彙学習用の単語帳はそもそも紙製のものである必要もありません。スマホにインストールできるアプリもたくさん市販されていますから、適切なものを見つけ、音と共に語彙を学習してください。

2. LINEに語彙学習の記録を残す。

V-Q2: 私は単語帳で語彙を覚えるよりも、実際に使われた英語をその文脈の中で覚える方が好きです。しかしこの方法だと、学んだ単語を一箇所にまとめることができず効果的に復習することができません。どうすればよいでしょうか。

V-A2: これはある学生さんが教えてくれた方法ですが、1人でLINEのグループを作り、そこに最近覚えた英単語をメモ代わりに入力しておいてください。そして他の用途でLINEを使う時にそのLINEグループを見る習慣をつけると効果的に復習ができます。最近は紙製の単語帳を持ち歩くよりも、このようにスマホを使って記録を取っておく方がいいかもしれません。

さらにAndroidでもiPhoneでも音声入力ができますが、英語でも音声入力できるようにしておくと、簡単にLINEなどのアプリにも音声入力することができます。ただ、発音がそれなりに正確でないと正しく英単語を入力できません。これが自分の発音を正しくするきっかけにもなります。特に日本人は、 日本語にはない子音 (/f/, /v/, /th/など)、日本語とはかなり異なる音 (/l/, /w/など)、 /p/, /t/, /k/ の無声閉鎖音(破裂音)の発音がうまくないので注意が必要です。音声入力用のAIがあなたの発音を正しく認識してくれるまで入力を繰り返すと、発音矯正の練習にもなりますしその単語・例文の記憶にもつながります。ぜひ英語での音声入力も試してみてください。(アメリカ英語基準でより厳格な発音判定を求める人は、S-Q5をお読みください)。

ちなみに回答者は、以前から毎朝読んでいるThe New York Timesなどの記事で、記憶に残したい英文があればそれをTwitterに掲載するようにもしています。Twitterも社交用以外に、英語学習専用のアカウントを作るといいかもしれません。そのアカウントには、自分の勉強の成果だけを投稿し、フォローは英語での情報源だけに留めてもっぱら個人での学習に使うわけです。

追記(2022/09/14)

それ以降、回答者はTwitterに投稿した英語を音読して、それをOtterに認識させる習慣を始めました。回答者の場合は、/w/, /r/, /t/, /d/などの子音と二重母音系の発音がいいかげんになるのが多いことがわかり、大変勉強になっています。毎朝、自分の好きな英文を使って自分の発音技能をチェックするのはいい習慣になっていると思っています。

学術英語についてのFAQ

1. 学術英語の特徴とは?

A-Q1:どうもこれまでの「流暢に話す英会話」といった英語のイメージを払拭することが困難で、自分の英語力について自信をもつことができません。科学者として英語を使うことにおいては「英語ペラペラ」は必ずしも第一優先事項ではないと思っています。他方、それでは何が学術的な英語において大切なのかと問われれば、今ひとつ自分の中でも整理できていません。京都大学の英語教育はacademic Englishの能力開発を目指しているとのことですが、学術英語の特徴とは何でしょう。

A-A1:世界的な科学誌であるNatureは、科学者のためにさまざまなサービスを提供していますが、English Communication for Scientistsのページは、以下のUnitへの玄関となっています。ぜひ興味のあるUnitから読んで、学術界ではどのような英語使用が求められているかについて学んでください

UNIT 1: Communicating as a Scientist
UNIT 2: Writing Scientific Papers
UNIT 3: Writing Correspondence
UNIT 4: Giving Oral Presentations
UNIT 5: Interacting During Conference Sessions
UNIT 6: Communicating in the Classroom

English Communication for Scientists
https://www.nature.com/scitable/ebooks/cntNm-14053993/contents/

1. 将来の方向性が定まらないのでとりあえず英語を勉強しようと思っている。(2022/06/07)

T-Q1: ○○学部(文系学部)の2回生です。どこか大学生活の中で方向性を失っているので、とりあえず英語の資格試験のための勉強を始めようと思っています。どのような試験がお勧めでしょうか。

T-A1: 本格的な留学を目指すならやはりTOEFL-iBTでしょうか。この試験の概要については以下のTest Contentのページの下の方にある "Learn more about each test section"から Reading, Listening, Speaking, Writingのそれぞれをクリックしてください。わかりやすい動画が、試験問題のサンプルと採点基準や対策を簡単に説明しています(英語のtranscriptも提供されています)。

 

About the TOEFL iBT Test
https://www.ets.org/toefl/test-takers/ibt/about/content.html

  

ただ上のspeakingの動画を見てもわかるように、この試験にはある程度の対策が必要ですし、受験料も高額です。相談者の方は、まだ大学院に進むのか、民間企業で働くのか、それとも働きがいのある公務に就くのかもまだ決めていないとのことですから、無理に留学時に使えるTOEFL-ITPを選ぶ必要もないかもしれません。

このインタビューに応じていただいた院生さんや他の学生さんからも、とりあえず勉強の目標にするためにTOEICを選ぶという話を聞きます。TOEICは日本の企業では知名度が高いのでそれも1つのオプションでしょう。

ですが相談者のお話を聞いていると、試験対策の英語学習ばかりをするのではなく、自分の進路を決めるためにも、世界のことについてもっと知識を得て、その過程で副産物的に英語を習得することも考えてみればと思います

米国アップル社で以前管理職を勤めていた松井博氏は、AERAのインタビューに答えて次のように語っています。

  

試験スコアや資格取得自体を目的にしないことです。僕自身アップル時代にたくさんのノンネイティブを採用しましたが、TOEIC のスコアを尋ねたことはありません。その人の英語力は5分も話せばわかるからです。それよりも「自分の専門分野なら英語でも日本語でも困らないレベル」をめざしましょう。

AERAdot 「米アップルの元管理職・松井博さんが指摘する英語学習の問題点」(2022/05/13)

  

相談者の方は文系なので、例えばThe EconomistやThe New York Timesを定期購読するのはどうでしょう。デジタル購読すればスマホやタブレットで読めますし、パソコン上でしたら快適に単語の勉強をすることもできます (S-Q5の後半部分)。

これらの購読料は自分への投資と考えれば高くはないのではないでしょうか。経済学部のある教授は次のようにインタビューで語っています。

  

外国語能力を身につけることは自分への投資なので、30になってからできるようになるより、もう一年でも一刻でも早くできるようになったほうが、どんどん複利がついてリターンがきます。そして脳細胞も若ければ若いほど柔軟ですから、とにかく早くからスタートして、継続的にやることをお勧めしたいです。(中略)

グローバル化で人材がどんどん流動化していますから、日本で育った学生たちが、他の国の人材とダイレクトに競争関係に入っていきますさらに、ロボット化の波が来ます。AIによる機械翻訳もその1つです。今までは賃金競争にさらされるのは、途上国と競争するブルーカラーを中心とした製造業だったのですが、今は、ホワイトカラーの業務も賃金競争にさらされます。今までのような守られた状況はどんどん変わると思います。(中略)

大きな変化は研究だけではなく、あらゆる社会の分野に及んでくると思うので、そういったことも考えた外国語学習、自分のスキルへの投資を、これから何十年も生きなきゃいけない学生たちは、やっぱり考えておいたほうがいいかなという気はします。

経済学研究科・黒澤隆文先生「社会変化を踏まえ、自分のスキルへ投資する

  
 

相談者の方も、英語の報道を批判的に読み、自分が興味をもつ分野を見つけながら、同時に英語の力をつけてはいかがでしょうか。。せっかくの大学生活ですから、主体的に行動し、よい人生を作り上げてください。