プロジェクト型学習(PBL)

京都大学の初修言語科目内で行われているプロジェクト型学習について紹介します。

i-ARRC初修言語教育部門に属するZeilhofer講師が担当するドイツ語の授業では、次のようなさまざまなプロジェクト型学習(PBL)が行われてきました。次のリンクをクリックすると、それぞれを説明を読むことができます(説明には、Zeilhofer, Luisa「教室を飛び出し世界でつながる外国語授業 プロジェクト型学習で学生は何を学ぶのか?」『ことばと社会』24号)の一部を用いています)。

なお、Zeilhofer講師によるプロジェクト型学習の説明は以下のとおりです。

 プロジェクト型学習(Project-based Learning)はPBLと略されるが、同じPBLと略されるものに課題解決型学習(Problem-based Learning)もある。課題解決型学習は、具体的事例(シナリオ)に対して、その解決に必要な知識を小グループで自律的に学習していくことを指す。それに対してプロジェクト型学習は、一定の目標を達成するためにチームで取り組む過程を通じて知識の習得・応用・体験学習をすることを目指しており(Boss & Larmer 2018)、筆者が実践した方法もプロジェクト型学習である。既に具体的なシナリオがある課題解決型学習と違い、大枠だけを設定し内容は自分達で決めるプロジェクト型学習は、学生に自主性と協調性、論理性を身につけてもらうために最適であると考え授業に取り入れることにした。

 プロジェクト型学習は従来の講義型やロールプレイなどの授業スタイルと大きく違うため、懸念が表明されることも多い。例えば、「授業の中でプロジェクトを行う時間が確保できない」「学生の限定された外国語能力(特に初学者)でプロジェクトを行うことができるのか」「学生のやる気はあるのか」「どうやって成績評価をすれば良いのか」といったものである。こうした懸念の多くは、プロジェクト型学習を授業の付録のように位置づけていることで生じている。しかし、プロジェクト型学習は授業のメインとなる授業方法である。外国語能力が限られているという問題は、学習者のレベルにあわせた適切な補助を行うことで解決できるし、学生の「やる気」については、プロジェクト型学習だから従来よりも弱くなる、ということではない。個人的な経験からは、学生自身が内容を決める方が、取り組む動機は強くなる傾向にあると感じられる。成績評価についても、プロジェクトの準備にはかなりの時間を要するが、学生の評価に関してはルーブリックを使用するため、懸念されるほど難しかったり労力が大きかったりすることはない。重要なことは、学生に対する詳細はフィードバックであり、成績はその結果に過ぎない。成績を完全に廃止することが理想的だが、現状でも、ルーブリックを事前に提示することで、透明性を持った評価を実現できている。

Zeilhofer, Luisa「教室を飛び出し世界でつながる外国語授業 プロジェクト型学習で学生は何を学ぶのか?」『ことばと社会』24号、pp.150-151